010同時加工と組立治具
機械設計への依頼の中で、高精度化を求められることがよくあります。高精度な位置決め機構、高精度な計測機構といったものです。特に計測の場合、計測対象物に求められる有効桁数の少なくとも1/10の精度が必要となります。計測対象は、寸法、重量、温度、圧力など様々です。
ハードディスクの組立の中に、回転する媒体のバランスを測定して、アンバランス量を修正する工程があります。媒体を規定の回転数まで上げて、アンバランスの量とアンバランスの位置(位相)を計測します。身近で言えば、自動車のタイヤのバランスを測定する装置と同じで、計測結果に基づいて鉛のカウンターウエイトを貼り付けます。
バランスを計測する計測器は専門のメーカー各社から購入できましたが、その当時、回転体を計測器に取り付けるステージはユーザー側で設計製作する必要がありました。バランスを測定するためには、回転体を完全に固定するわけではなく、ある方向、例えばX方向にフリーになるように取り付ける必要がありました。したがって構造は、4つの板バネでステージを吊り、そのステージに回転体を取り付けました。回転時のX方向の揺れ量を測定することで計測できます。
厄介なのは、この4枚の板バネの取り付け位置が少しでも変わると、測定結果が大きく変わったり、ばらつきが大きくなったりすることです。当初はこの取り付け位置の誤差を最小にするように、部品公差、組立公差を厳しくしていきましたが、一向に良くなりませんでした。ある時測定値が安定した時があったので、逆にその時の取り付け寸法、部品寸法を計測して、部品はその部品寸法に合わせるため同時加工(材料を重ね合わせた状態で加工すること)をし、組立はその寸法に合う組立治具を作りました。結果、以降のバランスステージは何台作っても、安定した計測ができるようになりました。
公差をコントロールするか、同時加工や組立治具を使うか、ケースケースで使い分けていく必要があると思います。
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