370 Industrie4.0(オントロジーとセマンティクス)
ドイツ標準化ロードマップ Industrie 4.0 Version 4解説書がIEC/SyC SM国内委員会から発行されました。「本標準化ロードマップはDIN/DKEおよびドイツ国内の標準化の取り組みを内外にアピール、プロモートする媒体としての役割も担っているが、産業用のIoT活用という視点でドイツ国内や欧州に閉じたものでなく、広く世界に理解と協力を呼び掛けた内容になっている。」と説明されています。
この解説書の中に、今後、情報社会がさらに進むにつれて「情報爆発」が問題となると考えられ、その解決方法が、オントロジーとセマンティクスです。といったくだりから下記の記載があります
一般的なオントロジーとは「もの・こと」の整理のことを言いますが、「賢いデジタル化」に必要な狭義のオントロジーとは、特定の事業分野や目的ごとの言葉を必要十分なだけあげつらって「区分け」し「親子関係・構成関係・その他の関係」で整理する考え方のことで、整理した結果を「オントロジー辞書」と呼び、これを使って実際のビジネスで必要な「様々な情報の塊」(たとえば機器のスペックシート、組立図、購入購買票、あるいは工程表など)これを「セマンティクス」といいます。
以上 解説書より
ここでは、オントロジーとセマンティクスについて過去の経験に基づいて具体的に考えてみます。以前、プリント基板工場の品質を改善するため、製造データを活用して品質予想をして不良を未然に防止するシステムの構築に取り組んだことがあります。最初に行ったデータ棚卸では、現場には過去から現在に至るまでの膨大な製造データがあることが分わかりました。次に品質改善(歩留りの改善)においてどのデータが重要か、足りないデータはないかを明らかにする必要がありました。
品質改善を阻んでいる要因の分析について特性要因図(フィッシュボーン図)を使いました。大きな区分けとして特性要因図の中心(フィッシュボーンの背骨)から上に製造要因、下に設計要因を抽出するようにしました。さらに製造要因を4M(Man:人、Machine:機械、Material:材料や前工程からの仕掛品、Method:製造方法)で区分け抽出するようにしました。製造、品管、情シスの部門の関係者を集めワークショップ形式で要因を抽出し、親子関係を検討して特性要因図を完成しました。この取り組みがオントロジーに当たると思います。
さらに、各要因の重要度を検討して取り組みの優先順位を付けて、具体的な仕様を考えていきました。最も優先順位が高い要因はメッキ槽に入れる添加物の量とタイミングについてでしたが、必要とされるデータが極めて少なかったため、まずはデータを収集する仕組みを検討しました。次に高い要因としてはメッキ槽の温度管理です。メッキの生成速度は温度が1℃変わると5倍になることを考えると、サンプリング間隔がどのくらいで、温度の上限、下限がどのくらいといったことが見えてきます。この取り組みがセマンティックに当たると思います。その結果、過去の製造データに基づいた品質予想モデルを作成することが可能となります。そのモデルに製造工程のリアルタイムデータをインプットすると品質予測が可能となります。
一般にデータ活用システムの構築は データ棚卸→要因分析→データ収集→統合→品質予測 といった手順で進みます。オントロジーとセマンティックは品質予測の信頼性を左右する最も重要な工程であることが分かります。
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