362 DTFと多機能組立システム

 DTF (Desk Top Factory)は机上の製造ラインのことで、多品種少量の小型デバイス向けの生産方式の1つであり、2000年代初頭に研究会を通じて各メーカーで開発が進められていました。現在は、半導体製品を対象として、DTFの考えを取り入れた製造設備が提供されているようです。以前、同様の考えの下、部品実装組立セルを開発したことがあります。当時、このテーマで投稿した論文から課題と開発コンセプトを抜粋してみました。

 (生産変化に対する課題) 大手電機メーカーでは、小型デバイスの実装組立に高速・高精度なダイボンダーを用いることが一般的でした。ダイボンダーは大量生産向きですが、高額な初期投資を必要とし、安定稼働までに時間がかかり、設備サイズが大きいなどの理由により、試作レベル、多品種変量生産に向いていません。最近は、機械要素のモジュールや、小型汎用ロボットを使って、試作、多品種変量生産向けの設備が容易に開発できるようになりました。しかし、センサーデバイスの様に実装精度そのものが、製品の性能を大きく左右させる場合、市販モジュールや汎用ロボットを使うことはできません。

 (開発コンセプトと実用化) ①品種の変更に対し、工程の組み換え、追加が迅速に行えるように、工程共通のフットプリント100×300mmで高さ300mmのサイズでトランスポータブルなセルを設定し、それをベースマシーンとしました。 ②高精度位置決めエリアの選択と、それを応用したピック&プレース機構の開発。③ワーク、パーツの両方のポジションを認識するカメラ機能を採用しました。以上の課題、コンセプトに従って開発した部品実装組立ラインは、加速度センサーやジャイロセンサーの実装組立(接着剤貼付、実装、UV照射)の3工程に適用しました。

 参考資料

 https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol56-6/paper08.pdf

 特許:「部品実装組立セル」:特開2005-064287

 多機能組立システムは、多品種変量生産や混流生産ラインに向けたシステムで、加工系のマシニングセンターと考え方を同じくした組立系のアセンブリセンタ―を目指して開発したシステムです。以下は2015年に日本ロボット学会誌に投稿した論文の一部を抜粋し編集したものです。

〈多品種変量生産の課題と開発方針〉

 多品種変量生産に対応する混流生産ラインでは機種変更のため段取り替えが必要となります。マニュアルラインでは治工具、試験プログラム、供給部材の入れ替えを1分以内で行います。また、繁忙期と閑散期には1工程当たりの作業量を変動させます。さらに日々の改善活動による標準作業の変更のため、作業手順の組み替えが必要となります。したがって作業変更への自由度を確保しながら自動化を進める手法の確立が課題となります。

〈主要組立要素〉 

 ロボットで複数の作業をする場合、最も重要な機能ユニットがツールチェンジャであり、ロボットのエンドエフェクタとして搭載されます。ツールには貼り付け、組み付け、接着剤塗布、検査プローブなどがあり、必要に応じてロボットが交換作業を行います。多機能組立システムでは、ツールを0.9秒以内で交換できます。また、ツールへのパワーサプライは真空2系統、圧気2系統を備えていて、必要なツールが搭載されていれば、段取り替えや作業の変更は全自動で行うことができます。

〈組立要素のシステム化〉

 ロボット本体は高速、高精度を兼ね備えているパラレルリンクロボットを選択しました。システムの設備化にあたり、マニュアルラインの作業性を考慮し、フットプリントは700×700mmで高さは1,800mmとしました。

 ワーク供給は混流生産に対応するため、2ステージを持った回転テーブル型の搬送ユニットを作業者側(システムの前面)に配置しています。パーツ供給はライン作業者と干渉しないように、システムの後面に配置しました。また、段取り替えに伴う頻繁なパーツ交換に対応するため、供給機をユニット化し、プラグイン機能を施しました。これによりパーツの交換に伴う工数を大幅に削減することができました。(実はこの供給ユニットには前述のDTFを使っています)

 ワークとパーツのばらつきに対応するため、視覚認識機能(カメラ)を搭載しています。ワークを認識するカメラは上方から見下ろせる位置に固定し、パーツを認識するカメラは下方から見上げる位置に固定しています。

 これらに先のツールチェンジャを搭載し、多機能組立システムを構成しました。このシステムは、既存ラインのマニュアル作業との親和性に優れ、多品種変量生産の自動化、ロボット化を可能としました。このシステムはパソコン、携帯の製造ラインに適用しました。

 参考資料

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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