361ものづくりの基礎(工程能力指数)

 日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。

 ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。

 以上 日経ものづくり2021/4号抜粋

 さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼入れ・焼戻し」「工程能力指数」。ここでは、「工程能力指数」にまつわる過去の経験について記述します。ちなみに、工程能力指数とは、設計者が設定した公差(規格幅)と製造結果のバラツキについての分布の程度(工程能力)との関係を表す指標。です。

 現在、IoTの導入に取り組もうと考えている製造工場が増えてきています。受注調達、品質改善、設備保全など幅広く展開できるのがIoTです。ここでは製造工程における品質改善について考えてみます。

 過去に何回か製造データを活用した品質改善の取組みを行ったことがあります。いずれも、自動化設備から取り出すことができるデータ(たとえば温度、圧力、電流値、濃度などの物理データや設備エラーやイベントデータ)でした。対象はプロセス系工場、自動化が進んでいる実装工場でした。品質の指標の1つとして各工程の管理項目の工程能力があります。温度、圧力などの管理対象に関係なく同じ数値で表される指標です。たとえば数値が1.00であれば限界値を外れる確率は3/1,000、数値が1.33であれば限界値を外れる確率は60/1,000,000です。この数値を指標として工場改善のPDCAを回すことが出来ます。数値が良くないということは、不良(ロス)が多いということになります。

 一方で、人手作業中心の組立系の工場の場合はどうでしょうか。たとえばある精度に組立をしなければならない場合、基準精度に一発で入っても、数回やり直しして入っても品質上は同じです。しかし、冒頭の標準作業の時間を逸脱している可能性があります。時間がかかれば、1日の生産量が減ります。これもロスが多いということになります。

 組立系は人手作業が多く、IoTを進めるに当り、どのようなデータを取ればいいのかと悩まれる人がいます。その場合には、標準作業にかかる時間をデータにすれば良いと思います。難易度の高い組立はバラツキが多いはずです。ベテランと若手でも変わります。判断指標は工程能力です。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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