351ものづくりの基礎(受注生産と計画生産)
日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。
ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。
以上 日経ものづくり2021/4号抜粋
さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼き入れ・焼き戻し」「工程能力指数」。ここでは、「受注生産と計画生産」にまつわる過去の経験について記述します。ちなみに、受注生産とは、顧客から注文を受けたあとに製品を生産する業態です。計画生産は、注文を受ける前に、あらかじめ定めた計画に沿って生産する業態で、「見込み生産」とも呼びます。
さらに記事には、4つ生産業態が紹介されています。受注設計生産(ETO)、繰り返し受注生産(MTO)、ハイブリッド生産(ATO)、計画生産(MTS)です。ハイブリッド生産とは、受注生産と計画生産の両方の特徴の特徴を持つ製品生産形態です。英語ではATO(Assemble to Order)。部品在庫の調達までは計画生産で、製品組み立ては受注生産の形態であるためハイブリッドと呼ぶ。とあります。以下はこのハイブリッド生産の代表であるパソコンについてその実態について記載します。
パソコンはメモリ、ハードディスク、周辺ユニットの組み合わせにより、数百数千の組み合わせが存在します。部品を集めるだけでも多くの工数が必要となります。さらに、部品ごとに倉庫へ保管していたら対応はできません。
一般に入荷した部品は受け入れ検査後、すぐに組立ラインの脇にある部品棚に小分けして収納されます。倉庫のように大量の部品を収納することはできませんが、その日必要な部品数がそろいます。すなわち在庫を減らすことができるのです。次に棚の部品を組立ラインへ供給しますが、ここでは水すましという部品供給者が台車をもって、必要な部品を収集して回ります。数十、数百点の部品を間違えることなく集めるために、ピッキングシステムがあります。組み立てる製品の番号をパソコン、スマホなどの端末に入力すると、必要とされる部品の棚のランプが点灯します。水すましは、点灯しているランプの棚の部品だけを集めればよい、といった仕掛けです。
仕掛品の場合はどうでしょうか。パソコンの場合、大きく2つのラインがあります。プリント基板にチップ部品を実装しプリント板ユニットを作るSMTラインと、すべての部品とユニットを組み付ける製品組立ラインがあります。例えば、全自動SMTラインが9ライン製品組立ラインはマニュアルで18ラインあり、両ラインともタクトタイムが同じ場合、SMTラインは2直、製品組立ラインは1直となります。したがって、SMTラインは夜間も稼働しています。出来上がったプリント板ユニットは一時的に中間倉庫に収納されることになります。ただ、収納されてプリント板ユニットは次の日に製品組立するので、短期間で払い出されることになります。
完成品の場合はどうでしょうか。完成品は集荷場で一旦、出荷先ごとにパレットに乗せられて、ラッピングされます。その後、搬送トラックに積み込まれ、出荷となります。
以上のように、多品種変量生産の場合、一時的な中間倉庫以外、倉庫は存在しません。
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