340データ活用の投資説明

 ものづくり現場でデータをどのように活用するかが決まっていない状態で、差し当たって「見える化」をして、そこから何か発見があるだろうといった思いでデータ活用に投資する場合もあると思います。この場合、投資のための稟議書作成で頭を悩ますこととなります。

 例えば、「品質の安定化を図り、工程内の歩留まり向上や突発的なライン停止を防ぐために、IoTやAIを使って現状の見える化だけでなく、将来の見える化もしたい。従来から取り組んでいる特性要因分析(※1)やFMEA(※2)といった手法で、必要なデータを選定した上でIoTやAIを活用して精度良く品質予測や、設備故障予測をしたい」といったように、従来の品質改善活動の一環であることを含んだストーリーにしておけば、投資対効果も算出しやすく、今までの活動で得たデータを有効に活用できる点で、トップに納得してもらえるのではないでしょうか。

 トップが稟議書やプロジェクトのスタートを承認する際の判断基準は、投資の実行計画、回収計画が具体化されているか。だと思います。(たとえ安全や環境を改善し仕事のやり方、文化を変えるといった目的においてもトータルの経済効果で判断すると思います) スケジュールは投資計画期間、実行期間、回収期間を意識して作成するといいと思います。

・投資計画期間:フィージビリティースタディーまたはPOCを通して投資効果を算出する期間とします。具体的な施策において投資効果を検討し積み上げていきます(試作ラインを使った検証などがその例です)。生産技術、製造、量産技術、製品開発部門のそれぞれのチームが検討し積み上げます。生産効率何%削減とか、歩留まり何%改善などの目標値に達するまでで繰り返します。それと並行して人件費用、直材費用も算出しておきます。期間は半年〜1年程度。その後来年の投資予算を経営会議で了承してもらいます。

・投資実行期間:モデル工場を対象として計画を実行します。実行内容の変更や人や直材の変更は必ず発生すると思いますが、トータルとして目標値を守る取り組みを継続します。その仕組み(システム)の運用が安定稼働するまで改善を行います。期間は1年程度。

・投資回収期間:データを活用したシステムを全ライン、全工場へ横展開します。ここで注意することは、モデル工場で行ったIoTやAIの仕掛けを展開するのか、モデル工場で取り組みして生産効率化や歩留まり改善を阻んでいた真の原因を突き止め、その対策を展開するかを検討することが大切となります。(理想は後者だと思います)

※1特性要因分析

不具合が発生した時、その原因として候補がいくつも想定できる場合、それらの原因候補が一覧できるように整理しておくと、原因の究明が容易になります。原因候補つまり問題とする特性を系統的に整理し、図で示すのが特性要因図です。ここで要因とは重要な原因を意味します。特性要因図は問題とする特性とそれに影響を及ぼしていると思われる要因を整理して、お互いの関係が分かるように体系づけた図です。QCストーリーでよく使われる手法。特性要因図はその形が魚の骨に似ていることから、魚骨図ともいわれている。

 「品質改善の本」日刊工業新聞社より一部引用

※2 FMEA

 FMEA(Failure Mode Effect Analysis)は「故障モード影響解析」のことです。システムの機器、部品などの故障の要因(故障モード)を抽出して、システムを構成する機器や部品が故障した時どのような影響を及ぼすかを解析し、大きな影響を及ぼす機器あるいは部品を抽出する手法です。つまり、新しい仕事をするときは、必ず問題が起きると考え、予想できることは事前に解決しておくという考えです。適用対象は製造工程の不良予防、設備故障、検査システムの改善、災害防止などがあります。

 「品質改善の本」日刊工業新聞社より一部引用

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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