319ベアリングの与圧

 一般に、ベアリングは運転状態において適当な内部すきまを持って使用されるが、用途によっては取り付け時に「負のすきま」となるように、あらかじめアキシアル荷重を加えて用いる場合がある。このような使い方を「予圧」とよび、アンギュラ玉軸受や円すいころ軸受に適用されることが多い。

  Web Koyo より

 垂直多関節ロボットの回転部分に要求される最も重要な条件の1つに、剛性があります。剛性とはバネ定数のことであり、剛性が高ければ頑丈になります。垂直多関節ロボットの関節は、上下左右斜めのあらゆる姿勢の中で、ガタなく安定して動作することが要求されます。

 回転部分を支持する機械要素の1つとして、ボールベアリングがあります。ボールベアリングにも、軸方向の力を受けるスラストベアリング、ラジアル方向の力を受ける深溝ボールベアリング、モーメント力を受けるアンギュラベアリングなどがあります。ロボットの関節は全方向の力を受けなければならないので、通常は深溝ボールベアリングとアンギュラベアリングの組み合わせで構成します。スラスト力に関しては、アンギュラベアリングに適正な与圧を与えることで受けることができます。

 問題はこの与圧の調整です。ボールベアリングは基本的にガタがあります。このガタを取り除くために、ボールの軌道であるアウターレースとインナーレースでボールに圧力をかけること(押さえ込むこと)でガタを取り、剛性を上げることができます。

 このガタの取り方として、定位置与圧と定圧与圧の2種類があり、組立時に指示をしなければなりません。定位置与圧の場合、ガタの量を事前に計測して、ガタ+αのシム(薄い板)をアウターレースまたはインナーレースの側面に挟み込んで与圧を与えます。一方、定圧与圧の場合アウターレース、インナーレースを固定するねじのトルクを管理することになります。いずれの方式においても、熟練作業者による組立となります。熟練者といえども、ばらつきなく与圧を一定にすることは、至難の業です。

 与圧にばらつき(剛性にばらつき)があると何がいけないか。サーボ定数のマッチングが取れなくなってしまいます。この状態でロボットを動かすと、振動、発振してしまい安定動作ができなくなります。

 ある日、モーターメーカーのエンジニアに聞いてみました。彼たちはモーター軸を垂直に立て、そのモーター軸の上部に与圧分のおもりを乗せ、その状態でアウターレースまたはインナーレースをケーシングへ接着剤で固めると言っていました。(もちろん接着剤で固まるまではおもりは乗せたままです) 熟練者を必要としない、スマートな組み立て方だと感心した記憶があります。

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