296正規分布2版

 正規分布はものづくり分野において頻繁に使われる統計学の1つです。設計においては公差の計算により、設計している機械の信頼性を求めることができます。製造においては、サンプルデータから不良の発生頻度や各製造工程の能力をみることができます。

 以前、電電公社の電話の基地局にある配線設備の自動化に取り組んだことがある。(012コストダウン参照) リード線の配線の代わりにマトリックスボード、配線作業者の代わりにロボットが接続ピンをマトリックスボードへ挿入するといった自動配線設備です。ロボットが指定のマトリックスボードの穴にピンを入れるために、マトリックスボード上に敷設されたメッキパターンをロボットのレーザーセンサーで検出しながら、指定の穴の番地までトラッキングするものでした。

 接続ミスは絶対あってはならない厳しい信頼性の要求であったと思います。トラッキングのミスの発生確率と、接続ピンの挿入、抜去ミスの2通りで計算しました。

 トラッキングが外れる確率計算では、サンプリングレート、レーザーセンサーの位置ずれ許容公差、ロボットの位置決め誤差、マトリックスボードのパターン形成公差などを使って、1サンプル当たりのばらつきから発生確率を算出し、トラキングに必要な全サンプリングを通して発生する確率を求めたと記憶しています。

 また、ピン挿入、抜去の失敗確率はXYZθ軸から構成されるロボットの位置決め誤差、ピンを把持する機構の公差、ピンの公差、マトリックスボードの穴径の公差等を使って、失敗確率を算出しました。要求仕様は、百万回に1回のミスに抑えるレベルであったと思います。計算上では不可能であることが見えていたので、ミスをロボット自身が検出して、リトライ動作をすることで、対応することにしました。

 上記設備以外では、例えば、精密電子機器の自動組立ラインにおいては、各工程の自動化設備の信頼性をロボットの位置決め誤差、周辺治具、部品供給機、ロボットハンドなどの誤差を実測または、各ユニットを構成する部品の加工精度から算出して求め、ライントータルの工程能力としてまとめたこともありました。

 誤差、公差の分布を正規化した標準偏差を用いて個々のばらつきを合成して、システムやラインのばらつき分布にし、発生確率を計算できる統計学は素晴らしい学問であると思います。特に、機械設計者にとって、正規分布を使った信頼性評価は、公差を使ってものを作る前に数値で確認できるので、設計の必須プロセスとして、使いこなせるように取り組むことが必要だと思います。

 以上、ブログ№034 正規分布 再掲

<ブログ№034の追記>

 プロセス系工場の品質改善においても、上記の考え方が利用できると思います。プロセス工場の各工程では温度、圧力、電流、濃度など多くの管理項目があります。これらの管理項目はプロセス設計部門から提出された項目で、全てを満足すれば、アウトプットのプロセス製品の歩留まりは設計通りになります。各項目には上限下限の閾値が設定されており、製造部門では、その閾値内に温度や圧力がはいる様に、設備をチューニングします。が、チューニングには作業者、設備、材料、方式(4M)によるバラツキが発生するため、各項目が閾値内に入る信頼性を正規分布で表します(工程能力)。そして各工程能力の合成がアウトプットとしての工程能力すなわち歩留になります。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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