279レトロフィットとAI技術
日経XTECHの2020年12月号に「AIが古い機械のアナログ数値表示を読み取る、数枚の写真で学習」といった記事がありました。下記は抜粋です。
エヌエスティ・グローバリスト(東京・豊島)は山梨大学工学部コンピュータ理工学科教授の茅暁陽氏らと共同で、人工知能(AI)を活用して回転式アナログメーターの数値表示を読み取る技術を開発した(図1)。桁ごとに0~9の数値を記入した文字板が動いて表示が変わっていく回転式アナログメーターは自動読み取りが難しく、これまで巡回点検作業に人手が必要だったが、メーターを交換せずに自動化する「レトロフィットIoT」の実現に役立つ。
新技術は、数枚の写真からでも深層学習に必要なデータを自動生成できるのが特徴。最新の深層学習モデルと組み合わせれば、さまざまな環境に設置されている回転式アナログメーターをカメラで撮影し、自動で表示値を読み取れる。「0」から「1」へ変わる直前、すなわち「0」の文字の下半分と「1」の上半分が見えているような中間状態も認識する。
以上、記事の抜粋より
今まで何回かAMR(Analog Meter Recognizer)について紹介してきました。工場内には何百何千に上るアナログメーターが存在し毎日毎時、作業者がそれを読み取り、そのデータに基づいて設備のチューニング、材料・薬品の投入が行われます。すなわち、品質管理に必要な物理情報をセンシングした結果がアナログメーターに表示されています。AMRはこのメーターを読み取りデジタルデータに変換し、統一データ形式で出力します。どこのメーカーのどの種類のメーターであっても同様に取り扱うことができることも、重要な特徴の1つです。
AMRはアプリケーションソフトウェアですが、ハードウェアとして市販のスマホを使います。スマホにはカメラ、照明、ディスプレイ、メモリ、通信などの機能が搭載されていて、IOTと相性が良いツールです。スマホにAMRのアプリケーションソフトウェアをインストールします。スマホはアナログメーターを読み取る位置に設置されます。起動をかけると、1分毎にメーターを撮像してデジタルデータに変換します。データはスマホ内のメモリに格納することもできますが、LAN、Wi-fiを使って品質管理を行うセンターのサーバーに格納することもできます。
AMRを使うことで旧設備の多いプロセス系工場において、設備を停めることなく、メーターのメーカーや種類に依存することなく、ゲートウェイを用いることなくシステム化することができると思います。ただ、AMRはカメラで撮像しなければならないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分に対して工夫する必要があります。
以上は本ブログ№089プロセス系工場のIoT(その2)より
AMRはレトロフィット技術の代表的なツールです。しかしながらカメラで撮影するため、その場の環境に大きく影響されます。照明、振動がそれにあたります。さらに、高速に動作するアナログ針メーターの最大・最小値の読み取り、7セグ表示器の桁切り替わりやチャタリングなどの読み取りなど、多くの課題があります。冒頭の回転式アナログメーターの読み取りにAIを適用するといった技術が、近い将来これら各種のアナログメーターへ展開されていくものと思います。
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