258 IoT AIを活用した品質改善(解説9)2版

 ㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は9回目です。

<抜粋:データ分析2>

 予測した加工結果を品質改善に展開するためには、分析結果の活用方法を検討しこれを取り入れた現場の運用の仕組みを作り上げる必要がある。

①過去1年分のデータ(加工条件+加工結果)を学習データとして収集し、予測モデルを作成する。予測モデルは、月に1度、要因分析に基づき新規に作成する。

②直近1日分の加工条件を予測モデルで分析し、加工結果を予測する。

③加工結果の予測値が管理値を逸脱した場合、これを異常予兆として判断し、警告を出す。併せて加工条件のどの項目がその要因であるかを提示する。

④ ③の提示内容に基づき、加工条件のチューニングを行う。チューニングでは、基準値からのオフセット量の調整とバラツキを抑える作業を行う。実測値が管理値の上限から下限の範囲に収まっている場合でも、適正値に近づける試みを行う。

 本モデルの製造ラインは、加工条件を収集した工程以降に残工程が多数あり、最終の検査結果が出るまで約2週間を要する。不良の予兆が出ていたとしても、従来は、最終検査結果が出るまでは改善に着手することができず製造を続けることとなり、歩留まり低下の大きな要因となっていた。上記サイクルのように、製造途中で加工結果を予想することができると最終検査結果が出る前に改善へのアクションをとることができ、歩留まりの向上が期待できる。異常予兆の判定基準にもよるが、実データを使ったシミュレーションでは7割程度の確率で異常予兆を検知する結果を得た。

<解説>

 上記の運用サイクルを実行するために最も大切なことは、導入側の運用体制の構築です。工場は専門の役割分担の影響により、縦割り社会が形成されています。たとえば、製造部門や製造技術のメンバーは工場の情報システムや設備についてはわからない。情報システムや設備から見るとその逆です。また、各部門の上司と担当間のギャップについても同じことが言えます。上記の導入教育においては、製造技術のメンバーと情報システムのメンバーに対して、ワークショップを交えながら2週間ほどかけて行いました。また上司には目的、重要性と効果について教育していきました。

 異常予兆の確率は8割程度無いと実運用へ移行することは難しいと考えています。今後データ品質を向上することで可能になると期待しています。

<ブログ№112の追記>

 本フィージビリティースタディーはデータの棚卸から運用までが検証範囲です。これを推進、実行する体制作りにも検討を重ねてきまた。プロジェクト体制は次の通りです。

・ステアリングコミュニティー(経営部門):進捗、問題点の管理

・システム開発と構築

   (生産技術部門):運用システムの開発と拠点の教育指導

   (拠点の製造、製造技術、プロセス開発、情報システム部門):システム導入と構築

 ・要素技術開発

   (生産技術部門):データ収集統合の技術開発(IoT) データ処理分析の技術開発(AI)

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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