253気泡と亀裂

 「タイヤ製造過程の気泡発生原因を解明」横浜ゴムは、6月12日、同社技術者が行ったゴム技術研究に対し、一般社団法人日本ゴム協会の「第66回優秀論文賞」を受賞したことを発表。論文は同社の佐藤有二氏(写真左)による「加硫過程におけるゴム中での気泡発生機構の解明」で、これによりタイヤ製造の加硫時に発生し製品不良の原因となる気泡発生のメカニズムが明らかになった。

 タイヤ製造における加硫とは、原料となるゴムを成型して製造した生タイヤを金型に入れ加熱・加圧(加硫)することで、強い弾性を持つタイヤに仕上げる工程のこと。この工程により、タイヤのトレッド部に溝(トレッドパターン)が施されるが、工程中ゴム内に気泡が残留する場合があり、それが製品不良を発生させる原因のひとつとなっていた。

従来、このタイヤ加硫時に気泡が発生するメカニズムは十分明らかになっておらず、気泡による製品不良を防ぐには、製造過程で必要以上のエネルギーや時間を消費し、環境負荷の増大や生産性悪化に繋がっていた。~以下略~

 NEXT MOBILITY 2019/6/12 より

 ゴム、樹脂、金属などの材料の成型工程において気泡が発生することがよくあります。気泡は非常に厄介な問題です。材料に負荷がかかると気泡の周りには応力が集中します。また、気泡は材料内部にあるため非破壊で検査ができない点などがあげられます。したがって、製造プロセスにおいて気泡が発生しないように、作り込む必要があります。そのため、上記の様に気泡発生のメカニズムを解明することが大切となります。

 プリント基板の製造やプリント基板に部品実装する工程においても、同じく気泡の問題がありました。

 プリント基板の製造において、配線パターンのメッキに亀裂が発生する問題があります。いろいろな原因が考えられますが、原因の一つにメッキ生成工程におけるメッキ内の気泡があげられます。かつて、メッキの断面を電子顕微鏡で観察した経験があります。気泡そのものは非常に小さなものですが、中には連続しているものもありました。あたかも、サイダーを注いだコップの底面から炭酸の泡が表面に向かって等間隔で次々に発生しているようでした。プリント基板に部品を実装する場合、接着剤を使用します。ここでも接着剤の塗布の条件によっては気泡が発生します。

 気泡が存在するだけでは大きな問題にはなりませんが、材料には振動による繰り返し荷重、熱による収縮、樹脂の場合には湿度による収縮などが加わります。応力集中による亀裂の心配があります。材料の品質を保証するためには、環境試験が必要となります。特にプリント板は最近自動車への実装が高まり、車載に対応する厳しい環境試験をパスする必要があります。(電子機器に実装するプリント板の環境試験の数倍の負荷試験が車載用プリント板には必要となります)

 このような製造分野こそIoT/AIの活用が有効であると思います。

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