251ロボットによるセル生産方式

 セル生産方式はライン生産の長所である仕掛の少なさと、リードタイムの短さを活かしながら、編成ロスや切り替えロスを少なくして、多品種少量生産に対応できるように設計された。「図解すぐに使える工場レイアウト改善の実務」田村孝文・小川正樹著 日刊工業新聞社より。

 セル生産方式を運用するための最も重要な条件は、「多能工」です。多能工とは、多くのモノづくりのスキルを持っている人です。しかし、製造業では請負をはじめとする非正規社員化が急速に進むことになり、現場の多能工が減少してしまいました。「セル生産方式の基礎知識」Tech Note より

 ワークに部品を組付けたり、ネジ締めしたり、シールを貼ったり、接着剤を塗布したり、ワークを分割したり、などさまざまの作業を間違えなく順番通りに行うためには、かなりの熟練が必要になります。前回、ツールを交換しながら組み付け、シール貼付け、塗布を行う多機能組立システムについてブログ№231で記載しました。その結果、人はワークのリセット・セットといった高度なスキルを必要としない作業となります。既存の専用設備もリセット・セット以外は全自動になっていれば、同じく高度なスキルは必要ありません。これで多能工に頼るセル生産の課題は解決できます。

 生産技術者としては、次にリセット・セット作業もなるべく自動化したいと考えます。それがロボットによるセル生産方式の開発です。対象はSMTの後工程で、チップ実装されたプリント板に両面テープが付いた部品3種の貼り付け、金属部品のネジ締めと、プリント板の分割です。当初構想にあった設備は部品3種貼付けの多機能組立システム、自動ネジ締め設備、プリント板をルーターで自動切断する基板分割機と、それぞれの設備にワークを順繰りにリセット・セットするハンドラ(6自由度多関節ロボットアーム)でした。ただし、ハンドラへのリセット・セット作業は人が必要です

 それぞれの配置はハンドラを中心に3時の位置に多機能組立システム、12時の位置に基板分割機、9時の位置にネジ締め機、6時の位置に作業者を配置しました。がネジ締め機は作業量からみて、マニュアル作業に変更しました。

 ハンドラのシーケンスは次の通りになります。①基板分割されたプリント板をリセット、②部品の貼り付けが完了したプリント板を多機能組立システムからリセットして、基板分割機へセット、③ネジ締めされたプリント板を多機能組立システムへセット。となります。

 ロボットによるセル生産方式は、人のスキルに頼ることなく、多品種少量生産ができるようになります。またそこから自動的に収集されるデータを使うことで、品質予測、設備故障の予測などスマートものづくりへとつながります。一方で多能工の代わりに、生産技術者、ロボットのシステムインテグレーター、ものづくりデータサイエンティストが必要となります。いかにこれら人材を確保するか、育成するかが課題となります。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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