239 IoT/AIの活用(統合~課題)

 以前、IoT/AIを活用した品質改善のフィージビリティースタディーを行いました。2回に分けて取り組み内容を記載します。第2回目は統合~課題です。

<統合>

 収集したデータは、そのままの状態では分析することができません。これを分析にかけられるように処理することをデータ統合と言います。具体的には、個々のデータをクレンジングし、クレンジングした複数のデータの紐付けを行います。データ活用のプロセスの中で最も厄介な作業であり、フィージビリティースタディーではこれを自動化したツール(Data Mediator)を開発して使用しました。

 開発したData Mediatorは、ゲートウェイと呼ばれるソフトウェアの一種です。各設備から生成されたデータは、このゲートウェイを通ってデータベースに格納されます。そのデータを使って各種の分析、解析を行います。

<分析>

 加工結果の予測は、予測モデルを生成するところから始めます。予測モデルは過去に蓄積された加工条件と加工結果のデータをAI技術で学習することで生成されます。入力するデータは要因分析に基づいて選定されているため、予測モデルにはベテラン技術者による加工条件のチューニング経験など現場のノウハウが含まれていることになります。この予測モデルに新たに加工条件を入力すると、加工結果の予測値がアウトプットされます。

 このようなデータ分析を行うツールとして、F社のCOLMINAデータ分析ナビゲーションというツールを活用しました。私たちは約1年分のデータを収集し、300項目、30,000サンプル(データ統合後の有効サンプル数は3,000)のデータから予測モデルを作成し加工結果予測を実施しました。

<運用>

 予測した加工結果を品質改善に展開するためには、分析結果の活用方法を検討しこれを取り入れた現場の運用の仕組みを作り上げる必要があります。

 ①過去1年分のデータ(加工条件+加工結果)を学習データとして収集し、予測モデルを作成します。予測モデルは、月に1度、要因分析に基づき新規に作成します。

 ②直近1日分の加工条件を予測モデルで分析し、加工結果を予測します。

 ③加工結果の予測値が管理値を逸脱した場合、これを異常予兆として判断し、警告を出す。併せて加工条件のどの項目がその要因であるかを提示します。

 ④ ③の提示内容に基づき、加工条件のチューニングを行います。チューニングでは、基準値からのオフセット量の調整とバラツキを抑える作業を行います。実測値が管理値の上限から下限の範囲に収まっている場合でも、適正値に近づける試みを行います。

<IoT/AI活用技術の課題1>

 ここで使用されたデータのなかには、1日2,3個しか収集されていない工程もありました。1日100ロット流れる製品のデータとしては明らかに不足していると思います。その工程の1つとして定温槽がありました。この定温槽のアナログメータへカメラを設置し、24時間撮影しAMR(アナログメーターレコグナイーザー)を使い1分間隔でデータを収集してみました。その結果、定温槽を一定に保つサーモスタットのスイッチングの様子や、定温槽に日に1回投入される薬液の影響で温度が変化すことが分かりました。1日の温度変化の詳細データを使えば、予測の精度も改善されると思います。

 AMRはカメラでメータを撮影しなければいけないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分)に対して工夫する必要があるなどの課題はありますが、合理的なデータ収集であることには間違いないと思います。

<IoT/AI活用技術の課題2>

 AI技術を活用したデータ分析:データ分析でより良い結果を得るためには目的に合った質の良いデータが必須となりますが、これを検証するには今のところ、試しにデータ分析をやってみる以外に方法は見当たりません。これらのデータ分析は、データの発見を効率的に行うことが求められます。その手段として、ものづくりの現場にいる人がノウハウや直感で見つけたデータの質が良いかどうかを、AI技術を用いて確認する仮説検証型アプローチが得策です。実際、品質改善で成功している多くの企業はこのアプローチを採用しています。

 また、これまでのデータ分析は、多大な時間と費用がかかっていました。原因はデータサイエンティストがデータの中身や使われ方、あるいは加工の仕方を理解するにあたって、ものづくりの現場にいる人に何度もヒアリングを行う必要があったからです。言い換えれば、現場のエンジニアが簡単にデータ分析できるツールが必要とされています。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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