234見える化の効果

 以前、異常予兆検知のAIシステムを導入するために、現地調査からフィージビリティースタディーを1年かけて行ったことがあります。異常予兆を検出するためには、まず十分な製造データ、プロセスの条件データと、その結果出来上がった製品の品質レベルがどの程度になるかの結果のデータが必要になります。過去に遡ってそれぞれのデータが、時系列または製造ロットと紐ついていることが必要となります。その紐ついたデータを機械学習することで、予測モデルを作り、その予測モデルに直近の製造データをインプットすることで、実際の結果が出る前に、品質のレベルを予測します。(異常の予兆を検出します)。詳細は本ブログ№104~№116を参照してください。

 最初にIoTを稼働監視に適用して見える化に取り組みました。対象はある製品のメッキプロセスでした。ここで使用されたデータのなかには、1日2,3個しか収集されていない工程もありました。1日100ロット流れる製品のデータとしては明らかに不足していると思います。その工程の1つとして定温槽がありました。この定温槽のアナログメーターへカメラを設置し、24時間撮影しAMR(アナログメーターレコグナーザー)というツールを使い1分間隔でデータを収集してみました。その結果、定温槽を一定に保つサーモスタットのスイッチングの様子や、定温槽に日に1回投入される薬液の影響で温度が急変化すことが分かりました。温度が1℃変化すると、反応スピードが5倍も変化する工程において、重要な改善ポイントを見つけることが出来ました。

 機械学習をしてAI分析して、品質不良の予兆を検出するといったことをする前に、今までのサンプリングで見えなかったものが、見えるようになっただけで、改善ポイントとその原因までわかる様になった事例です。逆にAIシステムを導入しようと考えなければ、この見える化もなかったかもしれません。

 データ収集に使ったAMRとは、旧式設備のアナログメーターをカメラで撮影し、デジタルデータ化して統一データ形式で出力します。それがどのメーカーの円形針メーターであっても、7セグ表示器であっても、フロートメーターであっても同じ形式で出力されます。言い換えれば、設備メーカーや、設備の新旧に依存することなく必要なデータを収集すれば、統一データ形式でデータベースに格納できることになります。ゲートウェイの機能は必要なくなります。

 AMRはカメラでメーターを撮影しなければいけないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分)に対して工夫する必要があるなどの課題はありますが、合理的なデータ収集であることには間違いないと思います。

 参考資料

https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/imagesgig5/amr-edge-v1.pdf

https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/imagesgig5/introduction-amr-edge-v1.pdf

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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