233工程内在庫とリードタイム

 まとめてたくさんつくることで、安くつくったつもりが売れ残って在庫になってしまえば、資産でもなんでもありません。在庫品を保管するための余計なコストがかかるだけです。~中略~ 機械をフルに動かして、モノを精一杯つくるほうが得だと考えるのではなく、売れるモノだけできたら、後は機械を止めておきます。「つくっていくら」ではなく、「売っていくら」と考えます。余分なものは一切つくらないことを基本としています。

 まして、今日のように市場のニーズが多様化して、多品種少量生産が求められる時代には、量産によって原価を安くするモノづくりは通用しません。売れ行きに合わせたモノづくりへの転換なしには、企業の生き残りは難しいのです。

 「トコトンやさしいトヨタ生産方式の本」日刊工業新聞社発行 より

 上記、書籍の中では「在庫は諸悪の根源」とも記載されています。ところで、在庫には部品の在庫、製品の在庫のほかに、製造工程内の在庫もあります。ここでは工程内在庫について経験を基に考えてみます。

<チューニングのフィードバックがリアルタイムにできない>

 プロセス系においては、工程数が多く製造リードタイムがかなりかかる場合があります。たとえば、先頭工程のプロセス条件をチューニングして、最終工程の検査の結果が分かるまでに10日程度かかるとしたら、チューニングが良かったのか良くなかったのかが、10日後でないとわからないことになります。もしチューニング結果が良くなかった場合には、結果が出るまでの10日間に製造した製品(工程内在庫)は不良となってしまいます。

 以前、プリント基板製造において、メッキ工程のプロセスチューニングの結果が2週間後でないとわからないといった問題がありました。そこで、過去のメッキプロセス状態とその結果のデータを機械学習させて、異常予兆を検出させる取り組みをしました。

<クリーンルームの汚染>

 半導体やハードディスクの媒体の様に塵埃、コンタミの付着が製品品質に大きく影響する製品を製造する場合、クリーンルーム内での製造となります。その仕掛けは、天井にヘパフィルターを取り付け、床に向かってクリーンエアーを流します(ダウンフロー)。塵埃やコンタミは床を通して(またはつたって)排出されます。したがって製品の上、または周辺にはこの流れを乱すもの、塵埃、コンタミが付着するものがないことが大切です。

 従って、工程内には作業に直接関係しない中間製品などの仕掛(工程内在庫)が多くなればなるほど、クリーン環境は損なわれることになります。クリーンルームで使われる搬送コンベアも、ベルトコンベアは使わず、クリーンエアーが通り抜けるように、コロコンベアが使われます。

<作業動線が複雑になる>

 各工程では、各作業者自身が遅延しないように作業ノルマを早い時期に達成しようといった考えが働きます。その結果、工程間に時間差が発生し、遅い工程の前には中間製品のたまりができてしまいます。しかし、そのたまりを置くスペースが近くない場合や、決まっていない場合は、空いているスペースに置くことになります。その結果、動線が複雑になりトータルとしての生産効率が大きく損なわれます。

 以上のほかにも、工程内にある在庫の長期放置で、腐食(食品関連)、錆(金属関連)などの品質への影響も考えられます。「在庫は諸悪の根源」であるのは間違いありません。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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