228ロボット内部センサーとスマート化

 従来マニュアル中心であった組立の現場は、ロボットの導入が急速に進んでいます。ロボットは高速、高精度で24時間稼働できるといった、マニュアル作業ではできないアクチュエータとしての大きな機能があります。併せて、ロボットには組立作業に使う視覚センサー、力覚センサーやロボット自身をコントロールするための、モーター電流の検出センサー、位置、速度を検出するエンコーダーなど、さまざまなセンシング機能が搭載されています。ここでセンシングされた情報(データ)は、人手を介すことなくものづくり全体に活用することができます。4Mを管理する製造部門、品質管理部門はもとより製品の開発設計部門へのフィードフォアード、フィードバックにも活用できると思います。

 組立作業またはハンドリング作業に使うセンサーをロボットの外部センサー、ロボット自身をコントロールするためのセンサーをロボットの内部センサーと呼びます。

<外部センサー>

 以前、開発した多機能組立システムでは、パラレルリンクロボットで、プリント基板上に実装されたチップ部品の表面に、絶縁シールを貼り付ける作業を行いました。ロボットがピックアップした絶縁シート(パーツ)をカメラでセンシングしその位置ずれ量を計測します。一方、供給されたプリント基板上のチップ部品(ワーク)も別のカメラでセンシングし位置ずれを計測します。双方の位置ずれ量をキャンセルするようにロボットが修正し、絶縁シートを貼り付けます。ロボットシミュレーションによるティーチングとリアルな現場の貼り付け作業のズレを自動修正できるシステムです。

 ハードディスクの自動化ラインの組み立て設備の一つとして開発したネジ締設備には、直交ロボットのエンドエフェクタとして、自動ネジ締めユニットが搭載されています。自動ネジ締めユニットは一定のネジ締めトルクを発生させるため、その電流量をセンシングしてトルクコントロールしています。

 電話線の自動配線システムで開発した縦形の直交ロボットには、配線用のマトリックスボードにある基準パターンをセンシングし、マトリックスボードの位置を計測するレーザーセンサーが搭載されています。レーザーの反射光を読み取りながら、ロボットが基準パターンの近辺を十字に走査し、その中心を求めます。

 レーザーセンサーの代わりにタッチセンサ―を使って基準パターンのセンシングを行ったシステムなど、対象に合わせたセンシング方法を開発してきました。

<内部センサー>

 ロボットは3軸、4軸、6軸タイプなど軸を組み合わせて、目的とする動作や位置決めを行います。その軸の基本構成はモーター、エンコーダー、減速機になります。ここでの内部センサーはエンコーダーです。エンコーダーはモーターの回転数、周波数をセンシングします。その情報はロボットコントローラーに送られて、位置、速度、加速度に変換されます。さらに指令通りモーターが動作しているかその差分を計測します。これを偏差と呼び、遅れが生じていたら、電流を増加させ、進んでいたら減少させます。これがサーボ機構です。

 ロボットには質量があるため、高速で動かすと慣性が生じ目標位置にスッと止まることができません。オーバーシュートと呼ばれるもので偏差が大きくなり、それを修正するために時間がかかります。この現象は、ロボットが重量物を搬送したり、ロボット自身に構造的なガタがあったりしても同じです。

 以上、ロボットの外部センサー、内部センサーについて過去の経験について記載しましたが、以下の様に、内部センサーをもっと活用することで製造のスマート化が進むと思います。

 たとえば、ロボット自身が持っている偏差の情報を活用すれば、作業の異常やロボット自身の異常を検出することもできます。また、この情報をサイバー領域で使うことにより、今まで機構特性でしか表現できなかったロボット動作が動特性を含んだ表現となる点は大きいと思います。課題は汎用ロボットメーカー各社によるこの情報の開示です。

 製造のスマート化は、メーカーや業界の連携が最も重要であるとつくづく思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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