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以前、精密工学会の生産自動化専門委員会の研究会資料の中に、牧野先生(現自動化推進協会名誉会長)が「自動組立の基本」について7か条の形式で表現されていたことを覚えています。中でも「自動組立は組立の自動化ではない。組立を自動化するために何かをすることである」は、ものづくり技術者の課題へのアプローチのしかたを広げてくれる大切な言葉です。
自動組立をやり易くするため、組立性を改善することは、製品設計からのアプローチです。自社で設計した製品であればDFM(Design for Manufacturing)を提案することで部品点数の削減、組立性の改善などを製品設計に反映させることは容易で、トータルで大きなコストダウンが期待できます。以下にその事例を記載します。
<多機能組立システム>
実際に行った設計改善について紹介します。対象はユビキタス製品のプリント板ユニットで、パーツは貼り物(絶縁シール)です。製品設計側では、絶縁したい端子の形状または周辺のエリア形状に合わせ、シールを設計していたため、機種ごとにシールの種類が増えてきました。これに伴い、製造側ではシール供給装置が複数台必要となり、多機能組立システム内の設置スペースの問題や、パーツ供給の工数増加が懸念されました。シールの完全共通化は設計側にとって大きな負担となるため、シール幅のみを標準化しました。長さ方向はパーツ供給機内で必要寸法にカットする方法を選択しました。同時に設計ガイドラインとして規格化を進めた。これにより部材費、供給工数の削減を実現しました。
<ハードディスク媒体バランス修正設備>
以前、ハードディスク組立ラインの1つの設備であるバランス測定・修正の設備を担当したことがありました。円板上の媒体を回転させ、バランスを測定し、アンバランス量とアンバランスのポジション(位相)を算出します。次にアンバランス量に見合ったカウンターウェイトを取り付けます。その昔のモデルは、金属片型のカウンターウェイトで、媒体を固定しているハブの溝へ、マニュアル作業でUV接着していました。当時最新のモデルは、自動化しやすいように、Cリンク形状のワイヤ製のカウンターウェイトで、ハブの溝へパッチン止めするようになっていました。
これに伴い、設備もその昔のモデルとは大きく変わりました。アンバランスの情報をもとに、数十種類におよぶこのワイヤ製のカウンターウェイトを、収納されている棚から縦型のXYZロボットがピッキングし、カウンターウェイト装着ロボットへ受け渡します。この装着ロボットが、ハブの溝へパッチ止めするといった方式となり、完全自動化になりました。
<電話線配線設備>
現在のように携帯電話が普及する前、固定電話の基地局には電話線を配線する設備がありました。新規の電話加入があると電話線を増設したり、電話番号の変更があると配線を入れ換えたりを、人手作業で行っていました。(旧電電公社) これをロボット技術で自動化する大規模なプロジェクトに参画したことがあります。
従来は、人手によるラッピング作業で結線していましたが、自動化に伴い、複数のマトリックスボードと接続ピンを使った結線方法が新たに導入されました。ロボットでマトリックスボードの接続穴へ接続ピンを挿入したり、接続穴から接続ピンを抜去したりして配線を行います。このシステムは最終的に、全国の無人の局舎へ1,000台以上導入されました。
以上3点は過去に経験したDFMの事例の一部です。穴(ワーク)とピン(パーツ)に面取り加工を施し挿入しやすくするといったものから、システムを大きく変えるものまでDFMは多彩です。
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