222クリーン製造と製品チェック

 ハードディスクドライブ(HDD)の自動組立ラインの開発と導入をプロマネ時代に経験しました。1997年から3年間で約20ラインをフィリピン、タイの製造工場へ導入しました。当時のハードディスクは5インチ、3.5インチが主流であり、その組立はディスクエンクロージャーといったワークに、媒体の取り付け、ねじ締め、バランス調整、ヘッドの取り付け、カバーの取り付け、ねじ締めなどの作業を行っていました。フィリピン、タイでは人海戦術で対応していました。

 媒体の記憶密度の上昇に伴い、組立作業のクリーン度の環境も年々厳しくなってきました。作業者がクリーンルームに入る前には、化粧を落とし、下着を取り替え、頭にネット、口にはマスク、手袋を二重にしたうえで、全身を覆うクリーンスーツを着ていました。このような装備で組立作業を行っても、ゴミ、コンタミの発生を完全に抑えることは難しく、ハードディスクの歩留まりは限界に来ていました。

 歩留まり向上を目的に、クリーン対応の自動組立ラインの導入では3つの取り組みがありました。①クリーン設備の開発 ②クリーン化の仕組みづくり ③メンテナンス

  ①組立には最低3自由度の位置決め機構が必要となります。1軸の直動ロボットを3台組み合わせた構造で対応しました。(プログラマブルなピック&プレース機構) 1軸直動ロボットはメーカーから購入することができましたが、クリーン対応にするため、ボールねじ、タイミングベルト、ギア列などの機構部すべてにカバーをしました。が、どうしても機構部の潤滑材の飛散を抑えることができなかったため、1軸直動ロボット内の空気をブロア(掃除機のようなもの)で吸い出すことで対応しました。1軸直動ロボットの場合、シリンダ構造なのでポンピング作用によって、内部空気が外へ出てしまいます。空気がうまく循環するようにバイパス構造にする手もありましたが、確実なのはやはりロボット内部を負圧にすることでした。なお、吸出しに必要な指標は真空圧ではなく流量であることも重要でした。

 ② 数台の設備を組み合わせてラインを構成するわけですが、ライン全体としてのクリーン化にも十分考慮する必要があります。クリーンルームはクラス100~1000レベルで保たれていますが、さらに高いレベルが必要な場合は、ライン全体または必要工程の設備にクリーンブースを設けます。このブースもクリーンルーム同様に、上部にはヘパフィルターを設置しダウンブロー構造にします。

 ③ 設備のクリーン度、ブースのクリーン度が保たれているかを確認するため、定期的に作業者がパーティクルカウンタで測定する必要があります。また、設備には配線配管が作業面より上にある場合があり、これも定期的に掃除する必要があります。また、常に配線配管のルートを工夫してゴミが落ちない、落ちても影響を最小減にするための取り組みをしていました。

上 記、ラインで製造した製品の品質確認は、組み上がったHDD内部のパーティクルの数を測定します。サンプル製品を純水に浸けます。この時、内部まで純水が入り込むように封止シールをはがしておきます。攪拌してしばらくすると、内部のパーティクルが拡散します。それを、液中パーティクルカウンタで測定するといった具合です。

 以上のように、かなりの設備投資が必要となりますが、歩留まり改善効果と自動化により高い品質であるといった営業効果も大きかったのではないかと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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