183基本の生産方式
「レイアウトの基本となる生産方式(タイプ)には次の3つがある。すなわち、機能別生産方式、ライン生産方式、セル生産方式である。」~中略~
「機能別生産方式;生産方式の起源は別名ジョブショップともいわれる機能別生産方式にある。生産量が増えるにつれ、それぞれの機械が増え、担当者もそれぞれの機械を、旋盤作業者は旋盤を、フライス盤作業者はフライス盤を専門的に担当する。徐々に台数と作業者が増え、旋盤現場、フライス盤現場などと拡大していった。その結果として、機械別現場が組織としても確立し、機能別レイアウトとなった。」~中略~
「ライン生産方式:ライン生産方式は部品や製品を製造工程に沿って、設備を縦割りで配置し、同期化させて生産させる方式である。同期する部品や製品の単位は1個またはロットの時もある。最も仕掛が少なく、リードタイムを短くでき、出来高の管理も容易なので、大量生産の製品では多くの企業で採用されてきた。」~中略~
「セル生産方式:セル生産方式は機能別生産とライン生産の両者の中間の形態で、機能別生産のように工程毎、機械ごとに独立ではなく、数工程同期の短いライン形式の生産形態である。工程順に設備をU字型に並べ、作業者が各工程を歩行して回るタイプや、台車で運搬して回る屋台方式が代表的である。セル生産方式はライン生産の長所である仕掛の少なさと、リードタイムの短さを活かしながら、編成ロスや切り替えロスを少なくして、多品種少量生産に対応できるように設計された。」
以上は、日刊工業新聞社から出版されている「図解すぐに使える工場レイアウト改善の実務」田村孝文・小川正樹著より一部を抜粋しました。それぞれの生産方式について記憶に残っている経験を以下に記載します。
機能別生産方式:以前所属していた生産技術部門には試作工場がありました。自動化の設備や治工具の設計図面に作業依頼書を添付して提出すると、部品加工から組立まで全てをやってくれました。一品一葉に対応できる工場です。
工場には旋盤、フライス盤、ボーリング、研削版、板金プレス、治具ボーラー、マシニングセンター、レーザーカッター、溶接、検査、組立、デバッグなどのエリアがあり、それをオペレーションする作業者は旋盤1級、フライス盤1級、組立1級のように国家技能検定を合格した資格保有者です。典型的な機能生産方式の工場です。
各工程での加工時間のアンバランスの影響で、待ちが発生する工程がどこかで見られます。若い設計者はそのタイミングをうまく利用して、加工法、材料、表面処理、加工基準など製造現場から教えてもらっていました。
ライン生産方式:ハードディスクドライブの自動組立ラインを開発して、フィリピン、タイの工場へ導入した経験があります。ハードディスクの記憶容量が大きくなるにつれ、ドライブの組立環境(クリーン度)が年々厳しくなってきたため、クリーン対応したロボットを使って、発塵の原因となる人手作業を減らし品質を安定化することが目的でした。
ラインは円板積層、円板ネジ締め、バランス測定と修正、円板バーニッシュ、ヘッドユニット挿入、カバー搭載、カバーネジ締めといった工程を自動搬送コンベアでつなぎ、15秒タクトで運用しました。みるみるうちに製品が出来上がります。各工程の設備のチューニングがあまいと、みるみるうちに不良品の山が築かれます。安定量産するまでに時間がかかりました。
セル生産方式:携帯電話、ノートPCの製造のように多品種少量で生産に対応する多機能組立システム(設備)を開発しました。汎用ロボットとツールチェンジャーを組み合わせて複数の組立てをこなす設備です。ノートPC製造工場では、この設備のほかにプリント板カッター、検査設備などをU字に組み合わせてセルを構築し、SMTラインの後工程に適用しました。一人の作業者は中間製品であるプリント板を、順々に設備にロード・アンロードします。タクトタイムは2分程度であったと思います。セル生産の場合、作業者の多工程持ちが必要になります。各工程の作業が自動化、機械化されていれば、作業者は中間製品のロード・アンロードだけで済みます。
生産の量、品種を分析して生産方式を決めることが通常だと思いますが、実行するに当り技術面、人材教育面など多くの課題が見えてきます。まずは、コンサルタントへ相談してください。
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