178説明変数の整理

 IoT化が進むとデータ解析へ向けてのデータ処理の流れを作る必要があります。説明変数整理について、住友金属鉱山㈱ 佐藤健司氏の「製造業におけるIoTから(データ解析)に繋げる為の技術者教育と組織の作り方」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1ぶ一部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 欠損値と適切な保管方法:データの取り込みは必ずしも一定間隔とはならず、測定されていない箇所も発生するものである。測定箇所が異なれば測定のタイミングも異なるので、ある時刻に必要なすべての測定値が揃うことはまず無い。そこで、ある時刻における必要な全ての測定値を揃える為には、離散的な測定値の間を滑らかに補完する技術が必要になる。

 適切な移動平均計算方法:補完の前に測定値の時系列データにおけるノイズ成分を少なくする必要がある。移動平均をとる際に移動平均区間をどの程度の長さにするべきかが問題になる。データ解析の目的によって適切な移動平均区間は変わるので、目的と現象を睨みながら適切な移動平均区間を決めなければならない。タンクなどに流動物が蓄積される工程があると、単位時間当たりの流量(流速)とタンクレベルによって遅れ時間が変化する。流速とタンクレベルの変動が甚だしい場合は遅れ時間や、それによる平均化の度合いもダイナミックに変えるデータ処理が必要になる。

 データセットの更新;定期的にデータ解析を繰り返すことを考えると、ある一定時間単位でデータセットを切り出してからデータ解析プロセスを動かすことになるであろう。そのデータ解析が始まったら、次のデータ解析の為に前回とは時刻をずらしてデータセットを切り出すことになる。

<経験と見解>

 以前、プリント基板製造のデータ活用に関するフィージビリティースタディーに取り組んだことがあります。メッキの品質不良を改善するといった課題に対して、仮説を立て、データを収集し、データを分析して品質異常を予測するというものです。対象となる工程はスル―ホールのメッキ工程です。多層プリント基板の層間をつなげるスル―ホールの内面にメッキを施す工程は樹脂、金属パタンが積層されており、無電解メッキ後に電解メッキを行います。

 電解メッキの場合、数十ⅿにおよぶメッキ槽の中をプリント基板が次々と定速で移動していきます。槽の先頭からは数十㎝間隔で電極が搭載されています。メッキの初期段階から最終段階までメッキの生成プロセスに合わせて、各電極の電流値が設定されています。品種が変わると設定値も変更されます。

 電流値以外のパラメータは、メッキ槽の中のメッキ液を循環させる流量、メッキ液の温度と濃度になります。電流値のデータは数分間隔のサンプリングレートであるのに対し、流量、温度、濃度は1日に数回程度です。電流値のサンプリングレートにそろえるために2つの試みをしてみました。

①補完:1日数回のデータを基に直線補完、指数関数補完しましたが、そのモデルと現場の感覚は必ずしもあっていませんでした。

②移動平均:電流値以外のパラメータは過去10日間のデータを使い見かけのデータ数を増やしました。

 品質異常の予測をするため、過去のデータを使って機械学習させます。そこで生成された予測モデルを使って、直近で流れている中間製品のプロセスデータから、検査結果が出る前に品質レベルを予測します。当初、学習データは直近6か月間のデータを使うように考えていました。これは、予測精度を保証させるため必要な機械学習データ数に基づきました。しかし、過去6か月間に現場で数回のチューニングがはいったため、チューニング後のデータを機械学習用のデータとしました。

 以上の様に各種データ整理と加工を施しましたが、顕著な予測精度の向上を見ることはできませんでした。品質、量とも不十分なデータはいくら整理、加工しても、十分な予測精度を期待することはできないと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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