156ツーリング・赤いペンキの定義

 自動組立の世界的権威の牧野先生の著書にツーリング・赤いペンキの定義ついて次の様な記述があります。

 ツーリングの定義:ツーリング(tooling)という英語は二通りの意味に使われる。一つはハードウエアとしてのツーリングであって、これは「治工具」と訳すことができよう。もう一つはソフトウエアとしてのツーリングであって、これには「段取」という言葉がぴったりする。まずハードウエアとしてのツーリングから話を進めることにすると、これは治具とか工具とかの総称である。もの(ワーク)に何らかの加工をほどこす道具が工具(ツール)であるが、ものの方を取り付けるものとして取付具(フィクスチャア)があり、工具の方を案内するものとして治具(ジグ)がある。これらを総称してツーリングというのであるが、そのツーリングの背後にある機械とツーリングの部分とをどこから分けるかというと、これには「赤いペンキの定義」がわかりやすいと思う。

 いま、機械の中を流れるワークに全部赤いペンキを塗っておいたとする。そうすると、ワークの触った部分には赤いペンキがつくであろう。これがツーリングである。たとえば組立機械の例で言えば、組立治具やワークのチャックはもちろんであるが、部品のフィーダや、検査プローブのようなものもこれに入ることになる。

 ツーリングの専用性:ツーリングは基本的に言って、そのワークに対して専用のものであり、もしワークが変わればツーリングも変えなければならない。たとえ機械は共通に使えても、ツーリングは変えなければならない。これは近代工作法の基本である。~中略~

 ツーリングのもう一つの意味は、機械に対してこうした治工具を取り付けることをいう。ワークが変われば、治具や工具を取り付け替えて調整を行わなければならない。これは通常、段取あるいは段取替と呼ばれている。以上、牧野先生の著書からの抜粋です。

 以上は組立系の作業を例にして説明されていますが、プロセス系においても同じことが言えるとおもいます。例えば、樹脂の射出成型プロセスにおいて射出用のノズル、金型がハードウエアとしてのツーリングです。成型するものが変わればこのツールを交換して、適切な温度、圧力、時間を調整することになります。これがソフトウエアとしてのツーリングです。

 データを活用して品質改善を進めるに当り、ツーリングとされる治工具や、その調整に関わるデータは統計解析やAI分析に大切なものとなりです。さらにツーリング部分だけでなく、温調機器、ポンプなどの周期的に動作するもののデータの収集も大切です。最終検査段階において、周期的な欠陥の原因を追及する周波数分析に大切なものとなります。データの棚卸をするに当り、ツーリング・赤いペンキの定義・周期性といったキーワードで整理すると、不足しているデータが何かが明らかになると思います。

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