043多機能組立システム

 以下は2015年に日本ロボット学会誌に投稿した論文の一部を抜粋し編集したものです。

〈多品種変量生産の課題と開発方針〉

 多品種変量生産に対応する混流生産ラインでは機種変更のため段取り替えが必要となります。マニュアルラインでは治工具、試験プログラム、供給部材の入れ替えを1分以内で行います。また、繁忙期と閑散期には1工程当たりの作業量を変動させます。さらに日々の改善活動による標準作業の変更のため、作業手順の組み替えが必要となります。したがって作業変更への自由度を確保しながら自動化を進める手法の確立が課題となります。

 施策の1つとして、単機能の専用ロボットを複数台組み合わせる方法が考えられます。しかし、ロボット間の搬送、スペース、ロボット単体の稼動率を考慮すると最善策とは言いがたいと思います。前記課題を解決するため、組立システムの多機能化を開発方針と定め、汎用ロボット、ワーク搬送、パーツ供給、ツールチェンジャを搭載した多機能組立システムの開発に取り組みました。

〈主要組立要素〉 

 ロボットで複数の作業をする場合、複合ハンド方式も考えられますが、自由度の点でツール交換方式が有効です。この方式において、最も重要な機能ユニットがツールチェンジャであり、ロボットのエンドエフェクタとして搭載されます。ツールには貼り付け、組み付け、接着剤塗布、検査プローブなどがあり、必要に応じてロボットが交換作業を行います。多機能組立システムでは、ツールを0.9秒以内で交換できます。また、ツールへのパワーサプライは真空2系統、圧気2系統を備えていて、必要なツールが搭載されていれば、段取り替えや作業の変更は全自動で行うことができます。

〈組立要素のシステム化〉

 ロボット本体は高速、高精度を兼ね備えているパラレルリンクロボットを選択しました。システムの設備化にあたり、現状のマニュアルラインの作業性を考慮し、フットプリントは700mm×700mmとしました。

 ワーク供給は混流生産に対応するため、2ステージを持った回転テーブル型の搬送ユニットを作業者側(システムの前面)に配置しています。パーツ供給はライン作業者と干渉しないように、システムの後面に配置しました。また、段取り替えに伴う頻繁なパーツ交換に対応するため、供給機をユニット化し、プラグイン機能を施しました。これによりパーツの交換に伴う工数を大幅に削減することができました。

 ワークとパーツのばらつきに対応するため、視覚認識機能(カメラ)を搭載しています。ワークを認識するカメラは上方から見下ろせる位置に固定し、パーツを認識するカメラは下方から見上げる位置に固定しています。

 これらに先のツールチェンジャを搭載し、多機能組立システムを構成しました。このシステムは、既存ラインのマニュアル作業との親和性に優れ、多品種変量生産の自動化、ロボット化を可能としました。

 参考資料

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja

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