035 3σの計算
自動組立において最も基本的なテーマは、ピンの挿入の問題です。ワーク側の穴に対し、ピンを確実に挿入できるかどうかです。通常、製品の組立では、組立(ピン挿入)後にガタがないことを求められます。したがって、ピンと穴のガタは1/100mmレベルの隙間で管理されています。言い換えれば、1/100mmの精度で穴とピンの位置決めができないと、挿入ができないことになります。
しかし、現実的には穴の寸法誤差、ピンの寸法誤差、ロボットの位置決め誤差、ロボットのティーチング時の誤差など、もろもろの誤差からなるトータル誤差からを考えると、1/100mm精度はとっても不可能な数値となります。そこで製品設計側で、穴、ピンの両方に面取り加工し、入り勝手を付けます。すなわち入り勝手分の位置ずれは許容されるということです。
再度、誤差について考えてみます。前述の各誤差の最大値(最大許容誤差)をすべて合計した誤差が、先ほどの入り勝手の寸法に納まっていれば問題ありません。実際は入り勝手の寸法よりかなり大きな値になる場合が、多々あります。そこで、各誤差の最大値がすべて揃う確率は非常に低いという前提で、次の様に考えます。
穴の寸法誤差±0.02mm、ピンの寸法誤差±0.02mm、ロボットの位置決め誤差±0.05mm、ティーチング誤差±0.05以内に3σの信頼性でそれぞれが保証されている(99.97%は誤差内)と仮定します。トータルの誤差は標準偏差の合成式2乗和平方で求められます。この例の場合、トータルの誤差は±0.076mmとなり、これが3σの信頼性を持ったトータルの位置ずれ量に相当します。ちなみに、最大誤差の合計は±0.14mmです。当然、それぞれの誤差が4σの信頼性であればトータルも4σの信頼性となります。
一般に、世の中の加工、組立、調整ほか、主要な仕様項目の信頼性は3σ以上であるといった暗黙の了解の下に成り立っています。機械設計で設計者が使う公差も同じ様に使うことができます。実際のものができる前に、各製造工程の能力、歩留まりを設計することができます。
経済の分野、工学の分野など様々な分野で活用されている統計学は、今後の製造現場のデータ分析の広がりに伴い、最強の学問として展開されると思います。
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