505 クリエイティブシンキング
以前、横浜のカップヌードルミュージアムという人気観光スポットにいったことがあります。
<世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発明し、地球の食文化を革新した日清食品創業者・安藤百福の「クリエイティブシンキング=創造的思考」を数々の展示を通じて体感することが出来ます。見て、さわって、遊んで、食べて、楽しみながら発明・発見のヒントを学び取り、自分だけのクリエイティブシンキングを見つけてください。>
とパンフレットにあります。
館内に入ると最初にカップと色とりどりの油性ペンを渡されます。カップの表面にはブランクがあり、入場者は日付と併せて思い思いに好きな絵や文字をかき込みます。続いて乾麺をカップの中に入れ、みそ、塩、カレーなどお好みの粉末スープとフリーズドライの具材を入れます。次に蓋をするためカップを機械にセットすると自動的に蓋が供給されてシーリングされます。最後にお持ち帰り用の透明の袋に自作カップヌードルを入れます。袋は2重構造になっていて空気を入れることが出来ます。手動のポンプで空気を入れると、カップヌードルがまるで風船の中にある様に包装されます。
以上の製造工程の中で、安藤百福さんがクリエイティブシンキングしたところが、乾麺をカップへ入れる工程です。カップヌードルを量産化するに当り、自動化は必須になります。当初、カップの中に乾麺を入れる場合は、数十ミリの高さから落としていましたが、カップの入り口で止まってしまったり、カップの中で横になったり安定しなかったそうです。
ある日、カップの中に乾麺を入れるのではなく、乾麺にカップを逆さにかぶせ、ひっくり返すと安定することに気が付き自動化に適用したとのことでした。さらに素晴らしい点は、乾麺をカップの形状に合わせ円錐の台形状にした点です。ひっくり返した時、乾麺がカップの底までいかないで途中で止まる工夫がされています。その結果、乾麺に衝撃を与えないでカップに収めることができ、さらにカップの底面には空間ができ、お湯を注いだ時に湯回りがよくなり麺がほぐれやすくなるといった効果もあるとのことです。
自動組立の世界的権威である牧野先生の著書にも以下のことが記載されています。
バターケース:バターをバターケースに入れるのには、バターケースのほうをバターにかぶせるのである。ときどき、バターがうまく入らなくて、三つに切ってみたり、四つに切ってみたり、四苦八苦しているのを見かけることがあるが、このやり方は正しくない。バターの銀紙を広げて伸ばし、そこに空になったバターケースをかぶせてひっくり返せば、バターはきれいにケースの中に入る。ふとん袋の場合もこれと同じことで、ふとんをたたんで積んでおき、これに布団袋をかぶせて「やっ」とひっくり返せば、ふとんは見事に袋の中に収まる。
この、「ひっくり返す」ということができないと、自動組立機械の設計はうまくいかない。固定概念にとらわれない柔軟な思考の持主でないと、よい設計ができないのである。歯車に軸を立てるのには、軸の方を先に治具の中に入れておき、これに歯車を通したほうが一般にうまくいく。筒の中に液体を入れるのでさえ、下から入れたほうが良い場合があるのである。
組立品を組み立てる順序には幾通りもの方法があり、組立の方向や姿勢まで考えればその組み合わせは無限に近い。その中から最も自動化しやすい方法を選ぶべきである。
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