423設備設計(丸物と板金部品)

 機械設計製図の手順は一般に次の通りです。要求仕様や設計仕様に基づいて、最初に構想図を描きます。これを案画(あんかく)と呼ぶことがあります。構想図が具体化してくると、部品図へばらす作業に入ります。全て部品にばらすことができたら、次は組立図です。部品図を組み合わせていく中で、部品同士の干渉はないか、組立がちゃんとできるか、組立性はどうかを確認します。

 製品の機械設計製図と設備の機械設計製図では、部品のばらし方が違います。製品の場合には、量産を意識した部品ばらしになります。量産の場合、板金でも鋳物でも射出成型でも型を使ってものを作ります。そのため、なるべく一体化された部品で部品点数を、極力少なくするようにばらします。型そのものは高価ですが、量産効果により、型代を償却できるからです。一方、設備の場合は基本1品物となるため、型を作ることは価格的に得策ではありません。一般に汎用の工作機(旋盤、フライス盤、ボール盤、マシニングなど)で部品を作ります。したがって、部品ばらしの際は、なるべく単純な形状で加工しやすいものにします。その分、部品点数は多くなります。

 単純な形状で加工しやすい部品とは、どのようなものでしょうか?それは、丸物と板金です。丸物を加工する場合には、旋盤を使用します。円筒形の材料をチャックで掴み、回転させてバイトという刃物で削ります。加工する基準は端面と回転軸の2つだけであり、加工時の段取り替え(ワーク固定をし直すこと)も少なく済みます。また、精度に関しても、平面加工よりも簡単に1/100mmレベルを出すことができます。

 板金の場合、立体形状を折り曲げといった加工で作ります。フライス加工の様に、削って作る場合と比較して、材料費の面、加工時間の面においても、けた違いに有利となります。設備設計では、丸物、板金での部品作りが強く求められる理由がここにあります。

さらに製図においても、丸物は簡単です。通常部品は三角法を使って3次元の物体を2次元で表します。その時、正面図、平面図、側面図を描きますが、丸物の場合は、正面図だけで表すことができます。製図面、製造面のいずれも優れていると言えます。

 板金の場合、単純形状であれば作図は簡単ですが、複雑な形状の場合には、パズルのようになって、描きにくい、読み取りにくい図面となってしまうことがあります。あまり複雑であれば、部品を分割すればいいだけです。削りに比べたら、それでも安価な部品となります。いかがでしょうか。

 <材料について>設備の場合1品物となります。また、常に改造、追加工が伴います。そのため、材料に通常の鋼材を使用してメッキなどの表面処理を行うと、追加工したところが錆びる恐れがあります。これを避けるために、ステンレス系の材料を使います。材料費は高くなりますが、少量部品の表面処理は割高となることを考えると、トータル費用として問題はないと思います。ちなみに、加工には快削ステンレス鋼の303、板金は一般ステンレス鋼の304を使用しました。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

ものづくりの普遍のテーマに取り組んできた生産技術者の備忘録です。 スマート工場に向けた自動化、IOT、AIの活用について記載しています。 ご相談は下記のシマムラ技術士事務所へ。 It describes Automation and IoT/AI for smart factories. For consultation, please contact the following office.

0コメント

  • 1000 / 1000