410 IoT AI(データ収集)

 ㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は6回目です。

<抜粋:データ収集>

 データ収集の方法には大きく3種類ある。1つ目は、製造ラインの設備に自動的に蓄積されるデータを使用する方法である。通常、加工条件がデジタルデータとして数分単位で設備のハードディスクなどのメモリに格納されていく。その際、各データは製品のロット番号や加工時刻と紐付けされている場合もある(自動データ収集)。

 2つ目は、現場のオペレータが、加工条件や加工結果を計測器や分析器から読み取り、記録用紙やパソコンに入力していく方式である。データの収集やコストの制約があり、収集量は1日1~3回程度に限られる(マニュアルデータ収集)。

 3つ目は、タイムリーに計測されていないデータをレトロフィット技術により読み取り、収集する方法である(レトロフィット技術によるデータ収集)。

 製造装置には、例えば、装置の状態が7セグ表示器で表示されているが外部にデータ出力する機能はもっていない、アナログ式の円形メーターで表示され同様にデータ出力できない、といったものがある。レトロフィット技術では、従来、オペレータが読み取っていたこれら計測器をカメラで撮影し、決められたサンプリングレートで読み取って自動的にデジタルデータに変換し、メモリに格納することができる。新規に計測器を取り付ける場合に比べ、製造ラインを停止させることなく導入できる点で優れている。

 当社にはAMR(Analog Meter Recognizer) といったツールがあり、これを用いたデータ収集の例を示す(図略)。製造現場では、これら3つの収集方法が混在していると考えられる。

<解説>

品質の異常予兆検知を行うには、AIによるデータ分析で学習に用いる加工条件、状態データとそれに対応した加工結果のデータが必要となります。加工条件、状態データには加工結果との相関性がある項目が含まれていることや、データ分析を行うための十分なデータ量があることが求められます。そのため、データ棚卸や要因分析を行った結果、データの項目数やサンプル数が不足していた場合には新たにデータを収集する必要があります。

収集したデータにどのような項目が含まれているか、計測内容、単位、桁数などを正確に理解しておく必要があります。設備で自動的に収集されるデータは、得てして日常の運用シーンでは利用されず、現場の技術者でも十分把握してない場合があります。設備メーカーのヒアリングを含めた調査が必要となります。

<追記>

 AMR(Analog Meter Recognizer)について:工場内には何百何千に上るアナログメーターが存在し毎日毎時、作業者がそれを読み取り、そのデータに基づいて設備のチューニング、材料・薬品の投入が行われます。すなわち、品質管理に必要な物理情報をセンシングした結果がアナログメーターに表示されています。AMRはこのメーターを読み取りデジタルデータに変換し、統一データ形式で出力します。どこのメーカーのどの種類のメーターであっても同様に取り扱うことができることも、重要な特徴の1つです。

 AMRはアプリケーションソフトウェアですが、ハードウェアとして市販のスマホを使います。スマホにはカメラ、照明、ディスプレイ、メモリ、通信などの機能が搭載されていて、IoTと相性が良いツールです。スマホにAMRのアプリケーションソフトウェアをインストールします。スマホはアナログメーターを読み取る位置に設置されます。起動をかけると、1分毎にメーターを撮像してデジタルデータに変換します。データはスマホ内のメモリに格納することもできますが、LAN、Wi-fiを使って品質管理を行うセンターのサーバーに格納することもできます。

 数百数千のアナログメーターすべてにAMRを取り付けることはコスト面、作業環境への適合性の面などで無理だと思います。重要なのは事前に、目的にあわせて、どのデータが必要であるかを選定しておくことです。

 以上、AMRを使うことで旧設備の多いプロセス系工場において、設備を停めることなく、メーターのメーカーや種類に依存することなく、ゲートウェイを用いることなくシステム化することができると思います。ただ、AMRはカメラで撮像しなければならないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分に対して工夫する必要があります。

参考資料

https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/imagesgig5/amr-edge-v1.pdf

https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/imagesgig5/introduction-amr-edge-v1.pdf

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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