408 IoT AI(データ棚卸)

 ㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は4回目です。

<抜粋:現場の現状分析1>

 プリント基板の生産工程:プリント基板の製造ラインは、一般にリソグラフィ、積層、穴あけ、メッキ、検査などの工程から構成されている。それぞれの工程には、温度、電流、圧力など加工条件を管理するため計測機器が取り付けられており、数秒間隔で製造設備が自動的にデータをサンプリングしたり、1日に数回オペレータが目視でデータを読みとって数値をチェックシートへ記入したりしている。これらのデータはグラフにプロットされ、各工程の管理項目として監視されている。基本的には、管理項目のデータが管理値の上限から下限の範囲にあれば日々の管理は適正とされるが、実際の現場では、これをさらに狙いとする基準値に近づける取り組みがなされている。また、基準値に対するオフセット量やバラツキに関しても日々のトレンドを読み取り、製造技術者が経験に基づき分析を行っている。しかしながら、複数の工程間の組み合わせを考慮した分析を人手で行うことには限界があり、対応ができない。

 データ棚卸:対象となる製造ラインのどこに、どのようなデータがどのような形で存在しているかを知り、取りまとめることが、データ活用の第1歩である。これを私たちはデータの棚卸と呼んでいる。今回対象とするプリント基板の製造ラインにおいても、材料の受け入れから製品梱包まで調査を行った。大工程の調査結果の概略を示す。(表略) 製造ラインの大工程のなかには複数の小工程があり、各小工程には加工条件を示すデータがある。また、最後の工程には通常、検査工程が組み込まれており、それまでの工程の加工結果を示すデータがある。さらに複数ある大工程の最後には最終検査工程があり、製品としての最終的な加工結果を示すデータがある。分析に必要なデータを下記の通り分類した。(分類略)

<解説>

 最も重要なのが、データがあるのか? です。プロセス系の工場の場合、製造そのものは大型の自動化設備で行われています。オペレータはその状態を常に監視して、規定の条件の中に納まっていなければ、設備をチューニングします。対象の多くは、温度、濃度、圧力、ラインスピード、時間などがあります。このデータがどのような方法で、どのような頻度で採られ、どこに格納されているのかが、明確になっていて、初めてデータがあると言えます。またデータがあっても、AIシステムで分析するのに十分な量、質のデータであるのかも、重要です。

<追記>

 製造工程のデータ棚卸を漏れなく行う場合には、データ棚卸シートを活用することをお勧めします。このシートは、横軸にQC工程表の管理項目を、縦軸に時刻を一覧にした表を作成します。プロセス管理項目は(説明変数)、検査結果項目は(目的変数)となります。縦軸の各管理項目データの下(または上)に平均値、標準偏差、Cpk値などの統計処理結果を記入します。

QC工程の管理項目を紐づけた、トレーサビリティーサンプルを作成することで、多変量解析や機械学習が可能となり、最適化、品質予測へと展開できます。各工程の統計処理値を時系列に眺めると、周期性、傾向、ばらつき等から4M原因を突き止めることができます。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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