372 デジタルツール(3Dプリンター)

 3Dプリンターが登場したころは、どんなに複雑な形状なものであっても、3Dデータさえあれば造形できるということで、驚かされたものです。一方で、10㎤ぐらいの物体を造形するのに、数時間かかるといった点と、所詮モックアップレベルであるといった点から、一般社会には普及していないのが実情だと思います。

 企業での活用状況はどうでしょうか。パソコンやスマホの様に樹脂成型部品から構成されているプロダクトの場合、最もコストがかかる工程の1つに型化があります。3D-CADで設計したデータを使って仮型(モックアップ用)を起こします。仮型で成型した部品は、形状はもとより、色合い、質感といったものを確かめます。開発初期段階の重要なプロセスです。修正をかけるためには、仮型に追加工を施したり、部品を追加したりします。仮型は金属ではないとは言え、複雑な形をしているためかなりの工数がかかります。

 次に本型になります。本型で成型した部品が当初の機能を満足しているかを確認します。たとえば、パソコンやスマホの場合、アッパーフレーム、ロアーフレームの中に、プリント板、メモリ、ディスプレイ、ケーブル類が隙間なく、無理なく収納されているかを確認します。仮型と同様に、設計変更、型修正、成型品での確認を何回か繰り返して、フィクスされます。フィックスされた本型のデータを使って、量産型を作ります。量産型は型持ちが良くなるように、すなわち耐久性を向上させるため、処理を施します。

 3Dプリンターを使うことで仮型、本型の製作がなくなります。設計者から提示された3Dデータから直接樹脂でモックアップや機能チェック用のモデルが出来上がります。企業としては、少々精度が良い3Dプリンターの購入が必要ですが、開発工数の大幅な削減ができます。今では、3Dプリンターによるモックアップや機能チェックは開発プロセスの中に組み込まれています。

 工場へ新規設備を導入するケースはどうでしょうか。3Dスキャナーを使って工場内の従来の設備の配置、人の動線、設備設置環境を、3D-CAD内でチェックすることも可能ですが、所詮2次元ディスプレイ内です。1/10スケールでも1/20スケールでも、3Dプリンターで形を作ってみると、部品の形状、組み立て方、回りの環境との干渉など、設計者のみならず3D環境がない製造部門を含め確認できます。製造を協力会社に依頼しているのであれば、3Dプリンターを導入してもらってはどうでしょう。データを送って、そのデータでモデルを造形してもらえば、製造前に事前検討ができると思います。

 3Dプリンターが一般社会へ普及するまでは、まだ課題があると思いますが、企業活動の中に取り入れると大きな効果を生むことができると思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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