359ものづくりの基礎(焼入れ・焼戻し)
日経ものづくり2021/4号に「ものづくりの基礎が危ない」といったタイトルで次のような記事が掲載されています。
ものづくりに関する技術者の基礎的スキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている。そう考える技術者が多いことが日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。~中略~ 世界市場での厳しい競争を勝ち抜くため、ほぼ全ての製造業が低コスト化や開発期間の短縮といった効率化に取り組んできた。価値を生み出さないムダな作業を、標準化や共通化、デジタル技術の活用によって極力減らしていこうという取り組みである。しかし、こうした取り組みは技術者の基礎力低下を招く懸念がある。
以上 日経ものづくり2021/4号抜粋
さらに記事は次の10のキーワードを取り上げ、解説しています。「ポンチ絵」「デザインレビュー」「モジュラーデザイン」「生産管理システム」「受注生産と計画生産」「安全在庫」「パレート図」「強度と剛性」「焼入れ・焼戻し」「工程能力指数」。ここでは、「焼入れ・焼戻し」にまつわる過去の経験について記述します。ちなみに、焼入れ・焼戻しとは、金属材料に熱を加えてから冷やす熱処理の一種。硬さと粘り強さを両立させるため、高温状態から一気に急冷する処理である。です。
機械を設計するにあたり、材料の選択、またその処理の選択も悩ましいものです。一般によく使う材料として、鉄系、アルミ系があります。鉄系のなかにも板金折り曲げに相応しい鉄、削りに相応しい鉄があります。アルミ系も同様です。処理も表面に塗装を施したり、メッキを付けたり、熱処理によって材料の硬度を増したり、靭性を増したり様々です。
熱処理の1つである鉄材料の焼き入れ処理は、何のために行うかご存じでしょうか。機械の摺動部に焼き入れ処理を施し硬度を増すことで、摩耗を抑制するためというのが、一般的に思い浮かびます。重要な役割の1つに、高精度な部品を作るためというのもあります。
旋盤で丸棒を削る時のことを考えます。丸材をチャックに取り付けて回転させ、バイト(刃物)を送り削ることで、指定の径に仕上げます。丸材を削ると、コンマ数ミリほど回転軸に対して垂直方向へ撓んで逃げてしまいます。その結果、指定の径よりも大きくできてしまいます。再度バイトで削る必要があります。こういった状態で高精度な部品を作ることはできません。表面あらさを小さくし、高精度な部品を作る場合は、あらかた外形寸法を旋盤で削った後、焼き入れを施し、次に円筒研削盤で仕上げます。
以前、焼きを入れていない鉄は豆腐のようなものだ。と現場の人が言っていました。現場の人が持っている鉄のイメージや感性は、ものづくりにおいて非常に重要であり、設計者とは大分違うと気が付きました。ある時、ロックウェル硬度60度の位置決めピンを作ってもらいましたが、「そんなものどこに使うの?使い物になるの?」と聞かれました。その直後、誤ってそのピンを床に落としてしまいました。まるで、ガラスのように割れてしまいました。
0コメント