332若手機械設計者へ

<公差の話>

 機械設計者であれば、最初にぶち当たる壁の1つに寸法公差があると思います。製図や力学の計算は大学で学ぶので、ある程度はできますが、部品図を作成する場合の寸法公差はどのように決めればよいのでしょうか。当然、公差の積み重ね計算で求められるものもありますが、ほんの一握りでしかありません。公差はすべての寸法に付与しなければならず、悩ましい問題です。

 1つには、かなりの経験を積まないと適切な公差を寸法に付与することができないということです。穴と軸のはめあわせが、よい例です。すきまばめ、中間ばめ、しまりばめなどがあります。軸を穴の中でガタなく、回転させたい場合、軸と穴とでどのような公差を選んだらよいのかは、実際にものを作ってみて、自分の手でガタの具合、回転具合を覚える必要があります。そして、その具合で実際に機械に組み込んで、目的とする動作をするかを確認する必要があります。また、公差は上限、下限があるので、その影響も確認する必要があります。最初はベテラン設計者の公差記入をまねることも重要であると思います。

 治工具を設計する場合は、IT基本公差を使うことも1つの手です。IT公差は寸法ごとに公差が定められており、等級が小さいものほど高精度の治工具となります。当然、高価なものとなります。入社当初、先輩の寸法公差は小数点3桁まで記入されており、どうやって計算しているのだろうと、長い間疑問に思っていましたが、IT基本公差を適用していたのだと後程わかりました。

<カンを養う公式の話>

 「2倍の質量の物を持ち上げるためには、2倍の力が必要だ」「2倍の速さで走れば1/2の時間で目的地に着く」など、リニアな関係にある事柄については、カンが働きやすいと思います。一方で、乗数に関係したり、平方に関係したりすると、途端に感が働かなくなります。

 材料の曲げ強度の場合、断面が円形の片持ち梁の直径を2倍にすると、梁のたわみ量は1/16になります。断面が長方形の片持ち梁を曲げ方向に2倍の厚みにすると、梁のたわみ量は1/8になります。動力学で言えば、イナーシャは減速されると減速比の2乗分の1になります。標準偏差も3σから4σになると不良の発生率大幅に改善されます。

 力学にしても統計学にしても公式(モデル)があります。パラメータをどの程度変更すると、どの程度の効果が得られるかを察することができます。これが設計者のカンとなります。数多くの設計経験がある技術者は、このカンが鋭いといえます。カンが鋭いということは、詳細な計算を行わなくても、構造体、機構などを短時間に数多く創り出すことができます。出来上がった設計図を見ると、ムダがなくバランスがよいものとなっています。

 若手の設計者は、とにかく多くの設計、計算をこなし、カンを養ってほしいと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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