324 3点支持2版
3点支持を辞書で調べてみると「岩登りの基本姿勢。四肢のうち三肢で体を支えること。一肢だけを自由にして次の手がかり・足場へ移動する。三点確保。」といったように、一般には岩登りに関連する言葉です。機械の構造設計の分野では、以下のように安定して構造物を設置する際の技術課題の1つの解決方法として扱われています。
3点支持は3つの点で物体を位置決めする機能のことです。カメラの三脚、3本足のスツール、グランドピアノ、眼鏡(耳の2点と鼻の1点)等々調べるとたくさんあります。
3点支持の最大の特徴は、物体を置く面がいくら凸凹していても、必ず1か所で位置決めされる点です。言い換えればガタがない設置ができるということです。よく喫茶店に行ってテーブルがガタガタしてコーヒーがこぼれないかと、冷や冷やしたことはありませんか。これはテーブルが4本脚のため、位置決めが2か所あるから起こります。最近ほとんどのテーブルには、4本脚の内1,2脚には、ねじで高さを調整する機能があり、お客さん自身で調整することができます。古いテーブルには調整機能がないため、紙を折り曲げて浮いている脚の下に挟むといった経験があると思います。
では世の中の机、いすはなぜ4本脚が多いのでしょうか。いくら4本脚全部の長さがあっていても、床が凸凹であればガタが発生します。床が平であっても、4本脚の長さにばらつきがあればガタつきます。それは、脚の上に載っている天板が四角であるからだと思います。天板が四角の3本脚のテーブルを考えると、脚のない部分によりかかると、倒れてしまい危険です。少々ガタがあっても調整機能やゴム座を付けて、ガタが小さくなれば、それでよしとなります。
組立ロボットに使用される把持ハンドの場合はどうでしょうか。丸物部品の円周上をつかむケースはしばしばあり、安定した把持が必要となります。多くの設計者はオープン/クローズ機構にV字溝のついた2指を向かい合わせにして取り付けたハンドを設計します。V字溝は型指当たり2面あり、両指で4面となります。先ほどと同様、2か所の位置決めができてしまいます。すなわちV字溝加工と指取り付けの誤差分のガタが発生します。精密組立の現場で、このガタは致命的になります。3点支持にするためには、1つの指はV字溝、1つの指はストレート(溝なし)にします。
しかしながら、V字溝2つの4点支持には捨てがたい機能があります。それは、丸棒の径が変化しても常に軸中心は同じになるといった機能です。ではどうしましょうか。V字溝の寸法公差をいくら厳しくしても、指の組立公差を厳しくしても公差分の誤差が発生します。この場合は、部品図の注に「V字溝加工は2指同時加工のこと」、組立図の注に「ガタなきようシムを挟んで調整のこと」と記載して、製造部門へお願いしましょう。
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