241多関節ロボットの技術開発・評価・適用

 当時開発した多関節ロボット(M6)はモーター、エンコーダー、ハーモニックドライブを1つのモジュールとして、回転軸と揺動軸を組み合わせて6自由度をもっていました。セールスポイントは、高い位置決め精度を保証できることでした。 

<技術開発>

 ハーモニックドライブは、小型でモーター軸上に高い減速比をえることができる機械要素です。ウェーブジェネレータ、フレクスプライン、サーキュラスプラインの3点の基本要素で構成され、関節型ロボットの減速機として、非常に重宝な機械要素です。

 ただし1点大きな問題がありました。それは、楕円状をしたウェーブジェネレータかの1/2回転に1回発生する振動で、位置決め精度の劣化の原因にもなります。ロボットがスムースに移動、位置決めができるためには、この振動の低減が大きな課題となりました。最大の原因はウェーブジェネレータの取り付け精度(同軸度)でした。いくつかあった対策の中で最終的に、ハーモニックドライブを2個使いで、位相を90度ずらして取り付けるといった方式を採用することで、剛性を増し振幅を半分に抑えることができました。

<評価>

 モジュールを組み込んだロボットの精度評価するために、評価システムを構築しました。その当時は6自由度どころか3自由度でさえ、同時に測定できる計測器はありませんでした。また、精度測定したデータを収集するツール、分析するグラフ、表計算ソフトもありませんでした。

 XYZの同時計測は非接触で計測できるPSD(Position Sensor Device)を使用しました。PSDから出力されるアナログ信号をデジタルに変換するADコンバーター、ロボットと同期させデータを自動収集するためにPIA(Peripheral Interface Adaptor)を使用しました。また、収集されたデータは、自動的にシーケンシャルファイルに格納させるシステムを構築しました。さらに、データをみえる形にするため、ヒストグラムに表示するツールを合わせて作成しました。システム作成言語はBasicでした。評価する環境変化(特に温度)への対策に苦労しましたが、最終的には目標の位置決め精度を確認することができました。

<適用>

 開発を始めて2年後には、ティーチングプレイバック方式によるシステムが完成、実用化のフェーズに達しました。残念ながら社内への導入例は数えるほどでしたが、晴海で行われたFA展に出展中のM6を見たバレーボールで有名なA社から引き合いがあり、導入とあわせてエンジニアリングを手がけることになりました。

 A社の設備部隊は、この劣悪な作業の改善と品質安定化のため、油圧による自動加圧機構の開発に着手、型の内面に革を自動で並べる手段としてM6を採用してくれました。製品品質に大きく影響する革を並べる作業は、斜め移動ができ高精度位置決めが要求されるため、M6の特徴となっている機能性能を十分引き出すことができ、数年で100台程度を提供するまでに至りました。

 グループ会社を通して行っていたロボットビジネスは、残念ながら数年後に撤退となってしまいました。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

ものづくりの普遍のテーマに取り組んできた生産技術者の備忘録です。 スマート工場に向けた自動化、IOT、AIの活用について記載しています。 ブログ№240に索引を掲載しました。 ご相談はブログ№060シマムラ技術士事務所へ。

0コメント

  • 1000 / 1000