230光電センサーとIoT
「黒色も光沢面も安定検出 調整要らずのO社の光電センサー」といった記事が、日経ものづくりの2020年11月号に掲載されています。
O社は、従来に比べて検出の安定性を高めたCMOSレーザーセンサー「E3AS-HL」シリーズを発売した。反射型光電センサーの1種で、投光素子にクラス1のレーザーを、受光素子にCMOSイメージセンサーを使用し、3角測距方式で対象物を検出する。
局面・凹凸・金属光沢のある自動車部品や凹凸・色柄の在る食品・パッケージなども安定して検出できるため、設備立ち上げ時の設置や調整の工数を減らせるという。
次に2つの技術よって安定検出を実現した。1つは、1万回/秒での高速サンプリング。対象物からの反射による受光信号を積算して増幅するとともに、ノイズを平均化して低減する独自の演算処理回路を搭載し、微小な受光でも確実に検出できるようにした。
もう1つは、製造時におけるCMOSの受光レンズの高精度な位置調整。個体ごとにμm単位で調整した。受光スポットを最小化でき、材質表面の色や性状に依存せずに鋭いピーク形状の信号が得られるという。「2つの技術によって、対象物の色や材質、形状の特徴を問わずに安定検出でき、事前の調整が容易になる」
~中略~ 反射型は、設置するのが受発光モジュール1つだけで済む反面、対象物の表面状態によって検出の安定性が変化しやすいのが課題だった。このため、検出対象物毎に経験やノウハウに基づく設置設計や調整が必要だった。新シリーズでは、先述のように安定化検出が可能になり、そうしたセンサーの選定や調整の手間が省ける。「難しい対象物の検出には、現場での調整に1個当たり20~30分程度を要していたが、新製品なら数分で済む」。光電センサーは1つの生産ラインで多数使うため、全体として大幅な工数削減が期待できるという。
以上、抜粋内容です。以前、反射型の光電センサーでかなり苦労した経験があります。
ハードディスクの組立の中に、回転する媒体のバランスを測定して、アンバランス量を修正する工程があります。媒体を規定の回転数まで上げて、アンバランスの量とアンバランスの位置(位相)を計測します。身近で言えば、自動車のタイヤのバランスを測定する装置と同じで、計測結果に基づいて鉛のカウンターウエイトを貼り付けます。
アンバランスの位相を計測は、回転体のある基準(0度)からの位相(角度)で表します。ハードディスクには、複数の媒体の間隔を一定にするため、媒体と媒体の間にスペーサーが挟み込まれます。アルミ製のリング形状をしたスペーサーで外径20mm内径15mm厚さ5mm程度です。このスペーサーの外形の厚み方向に、黒の油性ペンでマーカーが引かれています。これが回転する媒体の基準となります。
数千rpmで媒体と一緒に回転するスペーサーのマーカーを反射型センサーで読み取っていました。アルミリングの表面あらさ、処理のばらつき、油性ペンの光沢などによってセンサーの読み取り精度が大きく変化します。マーカーの読み取りのためにアルミリングの表面あらさ、処理のばらつきを厳しくすることはコストアップにつながります、そこで当時は、マーカーの読み取り精度が最も安定する油性ペンを選定しました。同じ黒色の油性ペンでも読み取り精度は大きくばらつきます。数十種類の油性ペンの中から、あるメーカーの1つの型格を選定し、作業標準に組み込んだ覚えがあります。
冒頭に記載した新シリーズの反射型光電センサーを使えば、このような苦労はなくなるのだと思います。これは反射型光電センサー特有の問題ではなく、各種センサーに共通なノイズの問題です。これから製造分野に展開されるIoT/AIによるスマート工場の共通課題となると思います。
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