217自働化とライン設計

 トヨタ生産方式(TPS)のめざさすものは、ムダの徹底的排除の思想に基づいて、つくり方の合理性、つまり、工数低減を進め、生産性を高める一連の活動です。このトヨタ生産システムを支える2本の柱として「ジャストインタイム(JIT)」と自働化があります。

 ~中略~トヨタでは、単なる「自動化」ではなく「ニンベンがある自働化」が強調されています。不良品を後工程に送らないために、問題の発生した場所では機械やラインを止めて問題を顕在化させます。自働機の場合、問題が発生したとき、すぐ停止するようになっています。ですから、不良品は生産されないし、一人で何台も機械を持つことができます。つまり、多台持ちのことです。

 「トコトンやさしいトヨタ生産方式の本」日刊工業新聞社発行

 自働化を推進するに当り、「機械が加工を完了したら自ら止まる」「機械が異常を検出したら自ら止まる」といった考え方が重要となります。人と機械の作業を分離し、人を機械の番人にしないことによって省力化できます。ここで省力化とは人の作業を楽にすること(機械の監視ななど)です。省人化とは必要な人の数を少なくすることです。異常で止まることから、異常がよく見え、改善のニーズが明確になり、改善を推進することができます。

 さらに、省人化のみならず、少人化(物量などの変動があっても、作業者にタクトタイム分の仕事を与えること)がしやすいように、ライン構成を考えておく必要があります。

 たとえば、通常物量において5工程からなる組立ラインを考えてみます。各工程には一人の作業者がついています。各作業者は3つの部品の組み付け作業をします。1つの組付け作業に1分かかります。したがって各工程のサイクルタイムは3分です。工程の1つに3つの部品の組付けをする専用機械を導入すると1人省人化できます。

 物量が半分に減った場合は、各工程のサイクルタイムが6分になります。各作業者は6つの部品の組み付けを行います。作業者は2人少人化できます。一方、専用機械は3つの部品の組付けで、サイクルタイムは3分のままです。

 ここで注意しないといけないことは、どの工程に専用機械を導入するかです。1工程目が専用機械の場合は連続する2、3工程と4,5工程を作業1人に集約することができます。その結果2人の少人化ができます。2工程目が専用機械の場合、連続する工程は3,4工程か、4,5工程のどちらかです。その結果1人の少人化しかできません。

 既存のマニュアルラインに自働化設備を導入する時には、物量の変動や日々行われている改善活動を妨げることがないように、マニュアル作業の連続性を保つ必要があります。そのためには、自動化設備の導入はラインの両端から検討することが大切だと思います。

 人と機械が協調するセル生産の場合は、別途ブログに記載しようと思います。

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