180リアルタイムの測定
日経ものづくりの2020年9月号の特集の中に超分離に関するT社の記事があります。ここでその一部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
低濃度の塩湖水からでも低コストでリチウムカ(Li)を回収できる―。Liイオン二次電池をはじめとして需要増加が見込まれるLiの生産効率化に貢献しそうな材料「超高透水性NF膜」をT社が開発した。NF膜(ナノろ過膜)は液体をろ過する水処理膜の一種だ。新開発したNF膜(以下、新NF膜)は、水に溶けた状態で0.76nmというLiイオン(1価イオン)は通すが、0.85nmのコバルト(Co)などの2価イオンは通さないという高い選択分離性を持つ。加えて、従来のNF膜に比べ、そう透水性を焼く3倍に高めてろ過に必要となるエネルギーも低減している。
<経験と見解>
さらに抜粋記事の中では、従来は濃縮した塩湖水を薬剤生成して2価イオンを除去しなければならず工数がかかっていたことや、選択分離性と透水性のトレードオフの課題に対応するため、界面重合のプロセスについて言及されています。安定したフィルタの孔径を作るため、重合温度や分子構造などを調整したとのことです。
実際に孔径がどのレベル作られているか、選択分離性や透水性はどのレベルかについて、電子顕微鏡もしくはそれに準じる顕微鏡で観察し、透過率を測定した結果が記載されています。サンプル測定なのかリアルタイムの測定であるのかは言及されていません。量産製造に当たり、データを活用して品質を安定化するためには、リアルタイムの測定結果と、それと紐付く製造条件データが必要となると思います。いかに製造現場でリアルタイムに測定をするのか、今後の取り組みも楽しみです。
以前、小型プリンターの設計、製造課題について取り組んだことがあります。いくつかある課題の中で「水」の課題がありました。当時の小型プリンターの性能の一つに印刷スピードがありました。印刷スピードを上げるためには、短時間に高温で定着する必要があります。その結果、用紙に含まれる水分が蒸発し、用紙がカールし、スタックできなくなります。また、蒸発した水分が、用紙排出口についている静電ブラシの毛先を伝って用紙についてしまいます。排出している用紙端面から細筆で線を書いたようになっていました。水分が多ければ線は長くなります。
これを解決するために、定着温度のプロファイルの適正化(チューニング)が必要になりますが、同時にリアルタイムの測定結果が必要となります。用紙のカール径をリアルタイムに精度よく測定することはできないと判断し、水の線の長さを測ることにしました。水は透明で乾くと見えなくなってしまうので、用紙端面を水溶性の赤いインクペンで着色しました。水は赤く着色され、赤いインクの線の長さを測ることで、水分の多少を測定することができました。いかに製品を作るか、いかにデータを作るかです。
結局、チューニングでは対応することができませんでした。専用冷却ファンを追加することで出荷OKとなりました。
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